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諸経所讃多在弥陀

提供: 新纂浄土宗大辞典

しょきょうしょさんたざいみだ/諸経所讃多在弥陀

天台の荊渓湛然けいけいたんねんの『止観輔行伝弘決』で、常坐三昧の説明の中に見られる語(正蔵四六・一八二下)。智顗述『摩訶止観』二の「随一仏方面端坐両向」以下、常坐三昧において対する一仏と、行中の障りある場合の対処法としての念仏について釈する中で、その正面とする方向が西であり、念仏の対象が阿弥陀仏であると説く。その理由として、さまざまな経典がいろいろな仏を讃歎するが、中でも阿弥陀仏に対するものがたいへん多いので、念仏の対象は阿弥陀仏に限るとしている。浄土祖師たちは、この語をもって念仏による極楽往生の証しとする。『要義問答』において法然往生の対象を西方浄土に限定する証左としている(聖典四・三八〇/昭法全六一六)。なお、法然回心に決定的な影響を与えた書物について、『四巻伝』や『増上寺本』ではこの一句であると伝える。しかし、法然は『選択集』後序で自ら『観経疏』を念仏に帰した書としており、この一句が回心を決めたものとは考えにくい。


【執筆者:横田善教】