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観心略要集

提供: 新纂浄土宗大辞典

かんじんりゃくようしゅう/観心略要集

一巻。伝源信撰。ただし、後世の仮託と思われ、源信以降一一世紀までに成立か。本書は、利他的な立場から、智顗が説く観心を明らかにすることを目的としている。しかしながら、智顗が説いたままの観心を実践することは、時代的に困難であるため、浄土念仏を媒介とする方法が示されている。全体は一〇章からなる。第一章は厭離穢土、第二章で欣求浄土、第三章で、往生の方法としての念仏、つまり観心が説かれる。第四、五章では、厭離穢土・欣求浄土が可能となる根拠が述べられ、第六、七章では、観心の構造が詳説されている。第八章では、観心を助ける助行としての懺悔を明かし、第九章では、観心の基盤となる菩提心が説示され、第一〇章を、問答料簡としている。また、『往生要集』が遣宋された際、中国側からは、一定の評価を受けたが、天台『観経疏』の引用が全くないことに反発も招いた。本書は、このことに配慮し、天台『観経疏』に依った観心念仏の思想を源信も持っていたことを示すために、源信に仮託して撰述したともみられている。


【所収】仏全三一、『恵心僧都全集』一、西村冏紹・末木文美士共著『観心略要集の新研究』(百華苑、一九九二・三)


【参考】西村冏紹・末木文美士共著『観心略要集の新研究』(百華苑、一九九二・三)


【参照項目】➡観心念仏


【執筆者:和田典善】