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西山上人縁起

提供: 新纂浄土宗大辞典

せいざんしょうにんえんぎ/西山上人縁起

六巻または八巻。『西山鑑知国師図絵全伝』『西山上人御伝起記』ともいう。実導撰。本書は一巻から四巻までは、証空の一代にわたる行実や西山往生院三鈷寺の開創と変遷などを、五巻と六巻は、門葉の動向、ことに本山義行業や系譜について、絵相を挿入しながら記したものである。本山義が西山六流の中で証空の教学を最も正統に継承していると主張する意図が窺える。はじめに序があり、本文は六巻二四段、絵相は二一段からなる。末尾に至徳三年(一三八六)一一月二六日、証空の一四〇回忌にあたって報恩のためにこの草案を作ったとある。指揮は尊道親王をはじめ、道円親王、一条経嗣、公勝、有孝の染筆で、当時の貴人・高僧に依頼し、一部を実導が書いている。絵師は不明。証空伝としては最も古い成立で、是湛の『西山上人伝報恩鈔』七巻とともに、最もまとまった伝記である。


【所収】『国文東方仏教叢書』一


【参考】伊藤正順「『西山上人縁起』の撰述意図—特に証空の『般舟讃』発見を伝える記述を中心として—」(『仏教学研究』四九、一九九三)


【執筆者:伊藤正順】