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複檀家

提供: 新纂浄土宗大辞典

ふくだんか/複檀家

一つの家が複数の寺院寺檀関係を結んでいること。民俗用語では半檀家ということもある。江戸幕府はすべての人が必ずどこかの寺を檀那寺としてもつ寺請てらうけ制度を作り上げたが、これは必ずしも一家一寺を権力的に強制するものではなく、江戸前期には関東から九州にまで広範にわたり、一家が複数の寺院寺檀関係を結ぶという状況があった。各地に存在する複檀家の形態は、①家の中に二つの寺檀関係があり、男の寺、女の寺と固定されているもの。この場合には、結入してきた嫁や婿は、それまでの寺檀関係を解消し、その家の男の寺の檀家、あるいは女の寺の檀家となる。②家の中に複数の寺檀関係があるが、夫婦別寺であり、男子は父親の寺、女子は母親の寺に帰属し、その寺檀関係を結婚後も維持するもの。③家の中に複数の寺檀関係があるが、それは夫婦別寺であり、子供はその寺檀関係のうち父親の寺を男女ともに継承するもの。④家の中に複数の寺檀関係があるが、それは夫婦や男女によって帰属が決まっておらず、選択的に帰属するもの。複檀家は、寺檀制度確立過程の過渡的な形態であり江戸中期には段々と一家一寺に統合されていった。


【参考】福田アジオ「近世寺檀制度と複檀家」(戸川安章編『仏教民俗学大系7 寺と地域社会』名著出版、一九九二)


【参照項目】➡檀那寺寺檀制度


【執筆者:名和清隆】