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虫送り念仏

提供: 新纂浄土宗大辞典

むしおくりねんぶつ/虫送り念仏

稲の害となる虫を追い払い、その豊作や五穀豊穣、疫病退散、家内安全などを願う祈願的な念仏の一つ。ここでの虫とは、害虫以外に、作物の不作や疫病、天災をもたらすとされる悪霊なども含まれている。ほとんどの場合、一族や村、檀信徒など集団が母体となって催され、寺院や田の畦道、村の辻々で行われる。虫念仏、田供養と称されることもある。時期としては、六・七月といった田植え前後の時期に行われることが多い。まず、作物の害となる悪霊を払うため本堂内で百万遍念仏あるいは双盤念仏を称える。その後、大念珠を参加者全員で担ぎ念仏を称えながら村中を歩きまわる。寺で作られた名号札を「虫除け札」として家の入り口に貼ったり、青竹に差し田に立てる地方もある。現在では農業従事者の減少とともに、虫送り念仏が行われている地域は少なくなっている。


【参考】佛教大学民間念仏研究会編『民間念仏信仰の研究 資料編』(隆文館、一九六六)


【参照項目】➡虫供養念仏


【執筆者:江島尚俊】