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臓器移植

提供: 新纂浄土宗大辞典

ぞうきいしょく/臓器移植

臓器が機能を失ったり著しく機能が低下したために、生命の維持が困難になったり、あるいは生活上極めて困難な状況に直面した場合、第三者からの臓器の提供を受けて臓器を置換したり、失った機能を補う治療法。第三者である生体もしくは死体から臓器の提供を受ける必要がある。特に心臓は、停止している状態からの移植では生着率が悪く、動いている状態での移植が必要である。このための唯一の方法が脳死体からの移植、いわゆる脳死臓器移植であるが、人の死に関する考え方の変更を迫るものであり、その実現には倫理的問題や社会的問題が多く、特別の法律を定めて適用方法を厳格に定めている。その法律が平成九年(一九九七)に制定された「臓器の移植に関する法律」である。法律実施後一〇年以上を経過し、移植ができる脳死例が少ないこと、小児の移植ができないなどの問題があること、またこれらを原因として海外渡航移植がしばしば行われ国際的な問題になりかねないことから法律の見直しが行われた。同二一年に改められた法律(改正臓器移植法)では、死亡した者が臓器移植の意思を生前に書面で表示していなくても、遺族が拒まない場合に限り、死体(脳死した者の身体を含む)からその臓器を摘出できると規定したこと、また臓器提供者の年齢制限を撤廃し国内での小児臓器移植を可能にしたことが大きな変更点である。浄土宗総合研究所では、脳死臓器移植という治療法に関して、死に行く者の命と生きている者の命の間に軽重をつける治療法であること、臓器移植の普及が人体を部品の集合体とみなし利用可能な資源と考える風潮を助長することになりかねないなどの問題点のあることを表明している。


【参照項目】➡脳死


【執筆者:今岡達雄】