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神秘主義・神秘体験

提供: 新纂浄土宗大辞典

しんぴしゅぎ・しんぴたいけん/神秘主義・神秘体験

神秘主義(Mysticism)とは、ギリシャ語myein(目や耳を閉じる、内面に閉ざす)を語源とし、内面への沈静や瞑想などによって特殊な体験を得ようとする立場。神秘体験とは、知覚や思考などに依らず神仏などの超越的存在と直接的に接触もしくは合一した体験を主に指す。そうした神秘的体験によって日常生活や合理的世界観から離脱したり、神や仏などの超越的な存在に遭遇することによって従来有していた世界観や行動規範、行動理念が劇的に変化したりするのを重んじることを神秘主義とする。神秘体験は世界各地の諸宗教に普遍的にみられ、多くの類型がある。浄土教においては念仏三昧において見仏する状態がこれに近いと考えられる。法然は建久九年(一一九八)正月六六歳で見仏を体験し、『臨終祥瑞記』には、念仏の功により「極楽荘厳」と「仏菩薩の真相」を拝むのが常であったと伝えられる。また、夢中の二祖対面もある種の神秘体験といえよう。


【参考】W・ジェイムズ著/桝田啓三郎訳『宗教的経験の諸相』上・下(岩波文庫、一九六九・一九七〇)、鈴木大拙著/坂東性純・清水守拙共訳『神秘主義—キリスト教と仏教—』(岩波書店、二〇〇四)、岸本英夫『宗教神秘主義—ヨーガの思想と心理—』(原書房、二〇〇四)


【参照項目】➡見仏二祖対面


【執筆者:江島尚俊】