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然阿上人伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

ねんなしょうにんでん/然阿上人伝

一巻。別に『鎌倉佐介浄刹光明寺御伝』ともいう。道光撰。弘安一〇年(一二八七)八月作。浄土宗三祖然阿良忠の伝記で、良忠弟子道光が恩師の行状をまとめたもの。内容は、良忠が石見国藤原氏の出身であることから始まっている。一六歳で出家登壇し、法華の持者となるが、一八歳のときに『大聖竹林寺記』を読み、法照を異代の師として浄土門に帰入し、また律を宋から帰国した俊芿しゅんじょうから学び、南都に遊学して法相・三論・華厳を究めた。三四歳、石見国の多陀寺で不断念仏を修しているときに生仏から筑後の聖光こそが念仏の正統者であると聞かされ、嘉禎三年(一二三八)九月に聖光に入門し、翌年七月相承のすべてを授かった。その後、浄土教を弘めるために諸国を回り、鎌倉を拠点に念仏弘通専念した。また教化のかたわら五十余巻の著書を作り「報夢鈔」と名付けた。そして、弘安一〇年七月六日八九歳で入寂したことを記す。伝記の常として、托胎奇瑞、没後に門弟の中から良忠舎利を感得する者や、瑞夢を感じて悟入する者が現れたりする記事もあるが、良忠研究の根本史料である。


【所収】浄全一七、『続群書類従』九上


【執筆者:𠮷水成正】