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無量寿経論釈

提供: 新纂浄土宗大辞典

むりょうじゅきょうろんしゃく/無量寿経論釈

五巻(現存せず)。元興寺智光著。本書は鎌倉時代以降散逸したと考えられるが、恵谷隆戒などの手によって、『安養集』や『安養抄』に引用されている箇所の収集作業をもとに復元が試みられ、第一、二巻は半分程度、三巻はほぼ完全に近い形までに復元された。その内容は、第一巻は、曇鸞往生論註』の上巻を注釈し、第二から五巻までは、同じく下巻を注釈したものと考えられる。本書の特徴は、曇鸞が『往生論註』内で、四十八願の一々についての釈明を施さなかったのに対し、その一々に詳細な注釈を施している点である。これは新羅浄土教の特色であり、このことから、智光新羅浄土教家の影響を強く受けて述作したことがうかがえる。また、この四十八願の願名も、智光の独自の呼称であり、平安中期以降になって、良源極楽浄土九品往生義』や静照四十八願釈』等々において四十八願研究がさらに盛んとなってくる、その先駆的役割を果たしたといえる。


【資料】恵谷隆戒『無量寿論釈』一~五(佛大紀要三四、一九五八)


【参考】恵谷隆戒『浄土教の新研究』(山喜房仏書林、一九七六)


【執筆者:和田典善】