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掬水譚

提供: 新纂浄土宗大辞典

きくすいものがたり/掬水譚

佐藤春夫著。昭和一〇年(一九三五)六月二一日から同年九月二二日まで『東京日日新聞』(現『毎日新聞』)夕刊に、〈「掬水譚」—法然上人伝—〉として、小杉放菴ほうあんの挿絵とともに六四回にわたって連載された歴史小説。同一一年に、『掬水譚 法然上人別伝』として大東出版社より刊行(造本は変形箱入)された。同書には新聞連載の全ての挿絵も収録。その際、初出の第四章が第七巻へ移された(初出の「章」が、単行本で「巻」に変更)。単行本「はしがき」には、「建礼門院右京太夫が事を上人と相関するかの如く説くのはたまたま、時を同じくするをもつて作者が想を構えたのである」と記されている。また、連載に先だって「法然上人が八十年の生涯を語るには紙数が少々不足なので、その一時期をとつてここに一篇をものすることにした。現世の不安と痛苦とに耐えかねたいかなる人々が何時何故いつなぜ上人吉水の庵室に訪れて一掬の法の水に生活のあえぎを逃れ得たかを述べ記すのがこの一篇である」(同紙、一一日)と、この小説の狙いを述べている。平成二二年(二〇一〇)六月、浄土宗よりJP文庫四としても復刊されている。


【参考】前田久徳「解題」(『定本 佐藤春夫全集』九、臨川書店、一九九八)、『佐藤春夫全集』三(講談社、一九六一)、『日本現代文学大事典』(明治書院、一九九四)、『増補改訂 新潮日本文学辞典』(新潮社、一九八八)、『日本近代文学大事典 机上版』(講談社、一九八四)


【参照項目】➡佐藤春夫


【執筆者:小嶋知善】