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婚姻

提供: 新纂浄土宗大辞典

こんいん/婚姻

男女が夫婦となること。結婚ともいう。婚姻の類型の基準は配偶者の数によって、単婚—一夫一妻婚、多婚—一夫多妻婚・一妻多夫婚、乱婚に分けられる。居住の形態では、婿入り婚の場合は妻方居住婚、嫁入り婚の場合は夫方居住婚、選択居住婚、現代では多い独立した新居婚に分かれ、人種・民族・国民・階級・宗教集団・村落・氏族など通婚圏が設定されている場合には、その範囲内であれば内婚、範囲外であれば外婚といっている。外婚の典型は「近親相姦の禁止」(incest taboo)や中国・韓国などにおける「同姓不婚」の例があげられる。また、学歴・職業・生活環境によって似た者同士が結び付きやすいものを同類婚といい、自分とは異なったものに魅かれるのを異類婚といって区別する場合もある。日本では見合い結婚、恋愛結婚の区別もあり、配偶者選択の主体や方法による分類は様々である。歴史的には婿入り婚から嫁入り婚へ変化したとの説が一般的であるが、その変遷の過渡的形態とされる足入れ婚があり、このほかに、略奪婚、売買婚、贈与婚などがある。日本の民法では「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」(七三九条)とあり、届け出ることをしない場合は「事実婚」と表現することもあり、その男女関係を内縁関係ともいう。日本では、結婚は憲法により個人同士の合意による自発的申し出で決まるが、伝統的には家同士の結合、社会の承認が多くの場合に不可欠である。媒酌人を立て、結納、結婚式、披露宴、新婚旅行、里帰りの順序で行われた。仏教にあっては、比丘・比丘尼の区別があり、不婬戒によって男女の交わりは禁止された。日本では明治五年(一八七二)の太政官布告によって認められ今日に至っている。在家信者の守るべき五戒には不邪婬戒があり、正しい夫婦間の交わりは認めるが、邪まな男女間の交わりは禁止される。


【参考】E・ウェスターマーク著/中村正雄訳『人間の結婚の歴史』(創文社、一九五六)、有賀喜左衛門『日本婚姻史論』(『有賀喜左衛門著作集』六、未来社、一九六八)、大間知篤三『婚姻の民俗学』(『大間知篤三著作集』二、同、一九七五)、柳田国男「婚姻の話」(『柳田国男全集』一二、筑摩書房、一九九〇)


【執筆者:藤井正雄】