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四箇格言

提供: 新纂浄土宗大辞典

しかかくげん/四箇格言

日蓮述作中の、浄土・禅・真言・律の四宗の罪過を述べた言述に対する通称。日蓮諫暁かんぎょう八幡抄』(立正大学宗学研究所編『昭和定本日蓮聖人遺文』二・一八四五)等に出る類言を指す。「念仏無間 禅天魔 真言亡国 律国賊」の定型で知られる。日蓮は上述の四宗が国情を不安にし、国家が『法華経』を受容するのを阻害するものとみなした。四箇格言は長く日蓮門流にとって折伏しゃくぶく弘教の拠り所であったが、近代になり優陀那日輝うだなにちき新居日薩あらいにっさつ等、時流を鑑みて用いないとする者も現れた。日薩は「仏を念ずればひまなく、天魔しずかなり。言真げんまことなれば国ほろぼす、国の賊おさまる」と読み換えたと伝わる(南条文雄『懐旧録』七四頁、『南条文雄著作集』大雄閣、一九二七)。現在の日蓮宗もその流れをくみ、四箇格言教化の上で絶対的な意義を付与しない傾向がある。一方で田中智学ちがくや本多日生にっしょう等は日蓮の要言として、四箇格言の宣揚を訴えた。


【参考】市川浩史「四箇格言の意味」(福神研究所編『日蓮的あまりに日蓮的な』〔『福神叢書』二〕太田出版、二〇〇三)、大谷栄一『近代日本の日蓮主義運動』(法蔵館、二〇〇一)、石川教張「明治維新期における日蓮宗の動向」(池田英俊編『論集日本仏教史』八、雄山閣、一九八七)


【参照項目】➡念仏無間


【執筆者:小澤憲雄】