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善性凡夫・悪性凡夫

提供: 新纂浄土宗大辞典

ぜんしょうぼんぶ・あくしょうぼんぶ/善性凡夫・悪性凡夫

凡夫機根に、善性と悪性の二種類があるとする説。善導観念法門』によると、①悪・善②邪・正③虚・実④非・是⑤偽・真という五つの徳目のうち、それぞれ前者を捨てて後者を行ずる人を「善性人」とする。一方、⑥真・偽⑦正・邪⑧是・非⑨実・虚⑩善・悪という五つの徳目のうち、それぞれ前者を謗じて後者を行ずる人を「悪性人」とする。ここで重要なのは、善導が善性人と悪性人のいずれをも「凡夫」と捉えていることである。すなわち、凡夫凡夫たらしめている要素は①から⑩に挙げた善性・悪性といった徳目ではなく、解脱とは無縁にひたすら輪廻を繰り返し続ける「常没の衆生」としての、より根本的な罪悪性である。この人間観は、『観経疏』において九品往生の機類をすべて凡夫とする「九品皆凡」の立場と通底するものといえよう。


【参考】髙橋弘次「法然浄土教の人間観」(『改版増補・法然浄土教の諸問題』山喜房仏書林、一九九四)


【参照項目】➡凡夫罪悪生死の凡夫遇悪の凡夫信外軽毛の凡夫九品皆凡


【執筆者:工藤量導】