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六神通

提供: 新纂浄土宗大辞典

ろくじんずう/六神通

仏や仏弟子などが修行の結果得ることができる六種類の超人的能力のこと。Ⓢṣaḍ-abhijñāḥⓅchaḷ-abhiññāの訳。略して六通ろくつうともいう。①神足じんそく通(如意にょい通、神境じんきょう通ともいう。思い通りにどこにでも行ける自在の通力)、②天眼てんげん通(死生知ししょうちともいう。あらゆるものを見通し、未来の人々の転生をも知る能力)、③天耳てんに通(あらゆる音、声を聞く能力)、④他心たしん通(他人の心のありさまを知る能力)、⑤宿命しゅくみょう通(自身の無限の過去を知る能力)、⑥漏尽ろじん通(自身の煩悩が尽きて再生が消滅したことを知る能力)の六つ。このうち漏尽通を除いたものを五神通ごじんずう五通)といい、仏教以外の外道修行者も獲得することができるものとする(『成実論』一六、正蔵三二・三七〇中)。六神通は元来、バラモン教で三つのヴェーダの知識に対して用いた三明さんみょうに対し、釈尊が批判・主張した真の知識として宿命知、死生知、漏尽知の三明(『サンユッタ・ニカーヤ』〔『相応部』〕七・一・八、『南伝』一二・二八四~六)がもととなって、そこに他心通・神足通・天耳通が加えられてできたものとされる。法蔵菩薩四十八願の中に極楽浄土の人々が必ず六神通を得ることが誓われている(『無量寿経』聖典一・二二五~六/浄全一・六~七)。


【参考】榎本文雄「初期仏教における三明の展開」(『仏教研究』一二、一九八二)


【執筆者:榎本正明】