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伊勢信仰

提供: 新纂浄土宗大辞典

いせしんこう/伊勢信仰

三重県伊勢市にある伊勢神宮(正式名称は神宮)に対する信仰天照坐皇大御神あまてらしますすめおおみかみを祭神とする皇大神宮(内宮)と豊受大御神とようけのおおみかみを祭神とする豊受大神宮(外宮)に分かれる。天照大御神は、皇室の祖神であったが、次第に民間でも伊勢信仰が広まり、室町期には伊勢講・神明講・参宮講が組織され民衆から尊崇を集め、江戸中期から後期にかけては御蔭参りが流行した。仏僧の参詣としては、文治二年(一一八六)に重源東大寺の再興を祈願して以降、貞慶・叡尊・一遍らが参拝している。また法然は、浄土宗開宗に際して念仏弘通ぐずうを祈念するため、内宮に参拝したところ、日輪のなかに南無阿弥陀仏名号が現れたという。三重県伊勢市の厭離山欣浄寺は、法然上人二十五霊場の第一二番札所であるが、前記の故事にちなんで、天文九年(一五四〇)に創建された寺院である。なお浄土宗寺院では、鎌倉市の大本山光明寺内にある神明社のように、天照大御神を勧請する場合も見られる。


【参考】萩原竜夫「伊勢神宮と仏教」(同編『伊勢信仰Ⅰ古代・中世』〔『民衆宗教史叢書』一〕雄山閣出版、一九八五)、桜井勝之進『伊勢神宮 改訂新版』(学生社、一九九八)、所功『伊勢神宮』(講談社学術文庫、一九九三)


【執筆者:大澤広嗣】