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一白三羯磨

提供: 新纂浄土宗大辞典

いちびゃくさんかつま/一白三羯磨

議案の提議(白)を一回行ったあと、承認(羯磨)を三回行って決議をとる会議の形式。Ⓢjñapticaturtha-karmanⓅñatticatuttha-kammaの訳。通常は白四羯磨びゃくしかつまと呼ばれ、白四法とも呼ばれる。仏教教団が重要案件を決定する場合には、全員参加を原則とした会議が開催される。その場合、案件の内容によって白一羯磨、白二羯磨白四羯磨一白三羯磨)という三種の形式のいずれかを用いることになる。白一羯磨は議案の提議を報告するだけで承認を必要とせず、白二羯磨は議案提議の後に一回の承認を行う。白四羯磨は承認を三度行って決定をみる形式であり、比丘びくになるための具足戒授受の場合、重罪を犯した比丘の罪を裁定する場合、教団内で争いが起きた時にこれを収束させる場合などの重要案件に用いられる。インド以来の律蔵に基づく具足戒授受の作法では、儀式を執行する比丘羯磨師)が、資格確認など事前の作法を終えたのち、一〇人の比丘(十衆=三師七証)の前で受戒者に具足戒を授与する提案(白)を行う。その後、具足戒を授与することについて三度承認を行い、三回とも異論がなかった場合に具足戒の授受が完了する。日本の場合、鑑真によって律蔵に基づく具足戒授受作法が導入されたが、これとは別に、中国で隆盛をみた菩薩戒授受の作法ももたらされ、最澄以降、天台宗を中心にこの方法が次第に主流となっていく。浄土宗の場合、法然が天台の円頓菩薩戒叡空から授けられたことにより、以後、この菩薩戒相承していくことが伝統となった。具体的な菩薩戒授受の作法には幾つかの流派が残されているが、現在浄土宗が用いているのは十二門の形式をもつ「十二門戒儀」であり、その第七授戒しょうじゅかい作法一白三羯磨に該当する。すなわち、戒師は初めに三聚浄戒を説いて受者の決意を新たにしてから、その後三聚浄戒を保つかどうかを尋ねるが、この戒師の「よく保つや否や」との質問が白に相当する。引き続き、戒師は受者の答えるべき言葉「よくたもつ」を自ら口にし、受者は戒師と同じ言葉を繰り返す。これが羯磨に相当し、三度繰り返すことによって三羯磨が成立する。なお、「羯磨」は浄土宗では「かつま」と読むが、これは天台宗以降の北嶺の伝統にならった読み方であり、南都の仏教では「こんま」と読むのが伝統であったとされる。


【参考】恵谷隆戒『改訂円頓戒概論』(大東出版社、一九七八)、土橋秀高『戒律の研究』(永田文昌堂、一九八〇)、佐々木閑『出家とはなにか』(大蔵出版、一九九九)


【参照項目】➡羯磨授戒・受戒十二門戒儀


【執筆者:山極伸之】