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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0027A01: 第十五 可憍慢
Z15_0027A02: 第一に三界を厭ふべきと者。上卷に申つるが如く。
Z15_0027A03: 夫佛道を願んには先可三界也。此を不厭者彼こ
Z15_0027A04: を欣ふによしなしと云り。然るに天竺に十六の大國。
Z15_0027A05: 五百の中國。十千の小國あり。かかる國國の王の御
Z15_0027A06: 中に忽に位を捨て佛道を欣はせ給ひけんもあり。亦
Z15_0027A07: 近くは本朝の帝王其御ためしあり。爰に知ぬ世間の
Z15_0027A08: 難はなしと云共。後世の苦は無疑見えたり。是則昔
Z15_0027A09: の戒行の力賢くて十善の位にこたえて彌世をいとひ
Z15_0027A10: 遁れ給ふ。若あらはに厭給ふと見えさせ給はざるも。
Z15_0027A11: 惡を止て佛法を願ひましまさぬ國王はすくなし。實
Z15_0027A12: に今生を以て來世を可知。然るに我等昔し行ぜざり
Z15_0027A13: ければ隨て拙き身を得たり。是は耻ても猶可耻。其
Z15_0027A14: 上此中の三惡道の相を見るに可遁と見えたる所な
Z15_0027A15: し。其故は大方は罪とも思も寄ざりし事さへ重き業
Z15_0027A16: と成けり。又世間の人はさのみこそはと云共。ゆる
Z15_0027A17: さるともみえず。又知ざりしと云んとすれば重罪と
Z15_0027B01: 云り。是を遁んと云んも中中墓なし。旣に自業自得
Z15_0027B02: なれば夏の蟲の火をけたんと云に似り。然は世間に
Z15_0027B03: は彼帝王の御ためしを。まほり。出世には三惡道を
Z15_0027B04: 恐て唯各意のたくみをやめて。佛法の道理を尋んに
Z15_0027B05: は不如。實に佛無由事を敎へ給ふには非ず。ここに
Z15_0027B06: 今生るるは始て生るるに非ず。亦終りも永く終りは
Z15_0027B07: つるに非ず。刧を經し事數を不知。久しきより以來。
Z15_0027B08: 六道に廻り如此諸の大苦惱をうけ。徒に生れ死する
Z15_0027B09: 事を此度はげまずんば。何をか限り共知ざらん事の
Z15_0027B10: 心うさを是を厭へとなり。然に六道の中に厭ふに力
Z15_0027B11: あるは。只人間界也。其故は先惡道は苦を受て覺る
Z15_0027B12: 事なく。天上は樂を受て後を知ず。然ば人間は苦樂
Z15_0027B13: 相變つて老少不定なれば。無常目の前にして菩提心
Z15_0027B14: 掌にあり。又神も佛も力を加へて善知識の心にまか
Z15_0027B15: せたり。又かかる人界にて終はてて後に生れて他の
Z15_0027B16: 報ひを受ずば。さてもあるべきに。六道の中に人界
Z15_0027B17: の生を受る事は。譬は爪の上の土の如く。三惡道に

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