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Z1440 即心念仏摘欺説 敬首 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z14_0233A01: 卽心念佛摘欺說序
Z14_0233A02:
Z14_0233A03: 淨業の僧あり。予を草菴に訪ふ。茶話の次で。案頭に
Z14_0233A04: 新刊の卽心談義あるを見て。まづ隨喜して云く。この
Z14_0233A05: 五濁亂漫のをりから。かく奧深き。修心妙觀を。談義
Z14_0233A06: せらるゝことの。あり難さよとて。遂に朗讀一過し了
Z14_0233A07: て。のち驚て。予に謂て云く。此かの佛法の不饒益を
Z14_0233A08: 引と云もの歟。かく自法に淫し。他人の法を。謗られ
Z14_0233A09: ては。いかなる持戒の人なりとも。苦果を免れ玉は
Z14_0233A10: じ。天の道は。善に福し淫に禍すとなれば。いと怖ろ
Z14_0233A11: しきことならずやと。予笑て云く。驚き樣の遲きこと
Z14_0233A12: かなと。僧復た驚て云く。遲しとは如何と。予が云く。
Z14_0233A13: 昔し夢窓國師。四部の供養を受られて。悟達の心や起
Z14_0233A14: りけむ。狂魔心腑に入て。夢中問答を著はされぬ。今
Z14_0233A15: この談義は。全くかの問答の。再發せるなり。但し禪
Z14_0233A16: を敎にかへたればか。問答が談義となりぬ。然るに
Z14_0233A17: 子。數百年前の。問答には驚かで。今の談義に驚きし
Z14_0233B01: は。豈に後れたることに非ずやと。僧の云く。誠に爾
Z14_0233B02: り。但しかの問答には。當時松風吹しほりて。旅人の
Z14_0233B03: 夢を。破らざりしやと。予が云く。夢は破れもれつら
Z14_0233B04: ん。然れども。猶ほ溪谷の小玉と響き。又は人間の談
Z14_0233B05: 義と變じて。其音頗るかしまし。此みな無明を增長し
Z14_0233B06: て。瞋慧やまざる故ならむ。契經云。夫法師者。常應
Z14_0233B07: 慈憫。愛語謙下。若懷嫉妬。心存勝負。獲大重罪。と
Z14_0233B08: 深く愼むべきなりと。僧の云く。若し然らば。師何ぞ
Z14_0233B09: 一を罰し。百を戒めて。如來の正法輪を。護らざるや
Z14_0233B10: と。予以爲らく。彼の義旣に經に反す。豈に心を欺か
Z14_0233B11: ざらんや。心を欺くは。乃ち天を欺くなり。況や諸の
Z14_0233B12: 境界には。癡盲を行じ。師子吼は。外道を怖す。且つ怨
Z14_0233B13: 憎の邊りに於て。法樂を與ふるは。功德なるべしと
Z14_0233B14: て。終に摘欺說を爲て。僧に授く。僧。喜躍受持して云
Z14_0233B15: く。願はこの說を以て。廣く海內に布き。見聞の人を
Z14_0233B16: して。信じてこれに遵ひ。邪を息め善に向ふて。共に
Z14_0233B17: 樂邦に生ぜしめむとて。去りぬ。時に享保十三載。戊

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