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Z0510 心行雑決 然空 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0132A01: は。返々うれしくたのもしく候。しらず。いくめぐりの
Z09_0132A02: 生死のくるしみをかうけんに。いかにとして。此たび
Z09_0132A03: か〻る本願をきく事を得たるぞやなどは。さすがに
Z09_0132A04: しみ〲と覺えぬべき事にて候なり。
Z09_0132A05: 御經はくるしげなれども。御念佛は物うくもなきと
Z09_0132A06: いふ御事。まことにさにこそ侍るべけれ。くるしうも
Z09_0132A07: おはしまさぬは。これぞ菩薩のことにえらばせ給ひ
Z09_0132A08: し易行の德。又如來のわけて照させ給ふ不捨の益な
Z09_0132A09: るべし。
Z09_0132A10: 御ずずもちたるおりの(やう)に。た※のおりひまなく念
Z09_0132A11: 佛の申されぬとの御事。これ又さだめてさある事に
Z09_0132A12: て候。まことにいづれにてもひまなく申すこそよき
Z09_0132A13: 事にておはしませども。すこしの御おこたりを。さま
Z09_0132A14: で佛のかはりがましく思召うとむ事はあるまじきわ
Z09_0132A15: ざなり。佛の御誓ひは。心ながき樣にて。ちとのちがひ
Z09_0132A16: めにてに。くしと心がはりし給ふ御事は更に有べから
Z09_0132A17: ず。さるにつけてもこなたよりは。又かまへて目みせ
Z09_0132B01: にくからず。よく振舞むと執すべきにて候。
Z09_0132B02: 御念佛のおり。いたづら事の案ぜらる〻との御事。こ
Z09_0132B03: れも凡夫の習ひ力なき事なり。是をきらひては。誰か
Z09_0132B04: 往生をとげ侍らん。されば高野の明遍僧都。吉水の上
Z09_0132B05: 人に見參の時問ふて云く。いか※してこのたび生死
Z09_0132B06: を離れ候べき。上人答てのたまはく念佛して極樂に
Z09_0132B07: 生ずべしとこそしりて候へ。明遍又云く。それはかた
Z09_0132B08: のごとくさしりて侍る。あまりに妄念のをこり候を
Z09_0132B09: ばいか※はし申すべきや。上人云く。妄念發れども。申
Z09_0132B10: せば往生すとしりてこそ侍れとの給ひければ。◆あ
Z09_0132B11: らばとて明遍はたちてけり。其後上人內へいり(さま)に。
Z09_0132B12: 事々しき問樣かな。妄念をきらはん事は。生のつきた
Z09_0132B13: る目鼻をとりすてんといはん程の事ぞと仰ありけ
Z09_0132B14: れば。これをきく人皆疑をはれて悉く往生を遂げた
Z09_0132B15: りとこそ申し傳へて侍るめれ。
Z09_0132B16: 心行雜決

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