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Z0380 西要鈔諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0213A01: ひ給へるか。爲家月のこるさかの〻寺のかねのねに。つ
Z08_0213A02: ねに浮世の夢やさめなん。月をつくといふ緣の詞とす。○興にのり
Z08_0213A03: ぬべきとは。さいはいになが月の。有明の月のおもし
Z08_0213A04: ろき景を見て。興に乘じてかへるべしと也。さて是は
Z08_0213A05: 子猷尋戴の故事にて書き給へり。いにしへ。もろこし
Z08_0213A06: に王子猷といひし人。山陰といふ處に住みけり。雪の
Z08_0213A07: はれたる夜。月あきらかなるに。妻戶をおしあけて。酒
Z08_0213A08: をのみて四方をのぞめば。いづかたも皓然としろく
Z08_0213A09: して。いとおも白かりければ。何となくた▲ずみて。左
Z08_0213A10: 思が招隱の詩を詠じけるに。いと▲興おさへがたく
Z08_0213A11: して。あはれもの〻心えたらん友と。是をながめばや
Z08_0213A12: とおもふに。戴安道といふ友だちの。剡州といふ處に
Z08_0213A13: 居たりけるをおもひいで〻。やがて舟にのりて。河に
Z08_0213A14: そひて下りゆけり。戴安道が門ちかくなるほどに。あ
Z08_0213A15: ひなく夜のほの〱とあけたりければ。行もつかず
Z08_0213A16: してそのま〻かへりけり。人いかにと問ければ。興に
Z08_0213A17: 乘じてこ〻にいたり。夜あけ興つきぬ。なんぞかなら
Z08_0213A18: ずしも。戴安道にまみえんとぞいひける。晉書にあり。
Z08_0213A19: 書言故事第四圓機活法詩二。月淸集の歌に。山かせや花の雪ちる明ほの
Z08_0213A20: 〻。木の間の月にたれをたつねんと侍るも。右の故事
Z08_0213B01: を本としてよみ給へるなり。●(八十)兩度とは。去年の
Z08_0213B02: 秋は。眞如堂にして聽聞し。ことしの秋は。釋迦堂にし
Z08_0213B03: て聞給へる也。二尊遣迎とは。釋尊の發遣と。彌陀尊
Z08_0213B04: の來迎と也。此二字は大師の釋にあり。上卷のはじめ
Z08_0213B05: に註せり。○化風とは。異僧の敎化を風にたとへ。聽者
Z08_0213B06: の疑惑を霧にたとへて書き給へり。○蒙霧とは。蒙は
Z08_0213B07: 愚蒙の心也。霧はきりなり。時しも秋なれば。霧の字を
Z08_0213B08: 書き給へり。○論語。君子之德ナリ已上任彥升
Z08_0213B09: セシ秀才。上之化スルヿ。草ノ如ニ。風ノ如ニ
Z08_0213B10: 已上吳志。蒙霧連月已上揚子雲甘泉
Z08_0213B11: 。霧ノ如ニ而蒙ノ如ニ兮。已上。霧
Z08_0213B12: 地氣ナリ。蒙天氣ナリ已上●(八十一)これ此鈔筆記の所
Z08_0213B13: 以をしるしたまへり。すでに本尊より。松の枝をたま
Z08_0213B14: はりて。しるしたまへる書なれば。彌陀一敎。利物偏
Z08_0213B15: 增の兆瑞しるし。後の世まで。色かはらずして流布す
Z08_0213B16: べし。いとたのもしきわざなり。○先聞とは。歸命鈔
Z08_0213B17: の事なり。かの鈔と。この鈔と一具として。他日に又の
Z08_0213B18: これるをひろひて。手づから父子相迎を書きそへ給
Z08_0213B19: へり。すべて是を三部のかな書といふ。又二尊の夢の
Z08_0213B20: 御示現に依て書きたまへれば。瑞夢の鈔ともいふ。又

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