浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J20_0473A01: | 淨 土 宗 史 |
J20_0473A02: | |
J20_0473A03: | 第一期 開創時代 |
J20_0473A04: | |
J20_0473A05: | 第一章 立敎開宗 |
J20_0473A06: | 一 開宗 |
J20_0473A07: | 時は是れ高倉天皇承安五年七月安元ト改元西紀一一七五春某日。 |
J20_0473A08: | 所は比叡峯頭樹幽に流寂たる黑谷の邊學窓の下。淨 |
J20_0473A09: | 机に對して端坐し。今しも讀書三昧に餘念なき一沙 |
J20_0473A10: | 門あり。頭頂少圩にして稜角あり。眼眸黄色にして |
J20_0473A11: | 光彩あり。身には黑色の素絹と鈍色の袈裟とを着け |
J20_0473A12: | たり。倐忽見る。紫電閃閃一道の靈光は沙門の心臟 |
J20_0473A13: | を貫き。歡喜の熱涙は沙門の兩頰に滂沱たるを。嗚 |
J20_0473A14: | 呼其沙門とは誰ぞ。吾宗祖法然房源空上人なり。其 |
J20_0473A15: | 耽讀せられたる書籍は何ぞ。善導觀經證定疏なり。 |
J20_0473A16: | 二十有五年間の刻苦奮勵の効空しからず。多年胸裡 |
J20_0473A17: | に盤窟せる疑團は忽然として氷解し。日夕惝怳せら |
J20_0473B18: | れたる靈光は懷裡のものとなりぬ。其疑團とは何ぞ。 |
J20_0473B19: | 罪惡の塊子たる凡夫人がいかにして微妙莊嚴の報土 |
J20_0473B20: | に往生しうるかにあり。靈光とは何ぞ。稱念は彌陀 |
J20_0473B21: | 覺王の本願正定業にして凡入報土の左券たること是 |
J20_0473B22: | れなり。彼疑團を碎破し此左券を握りて歡喜落涙せ |
J20_0473B23: | る上人は。又昨日の煩悶子に非らざるなり。今や上 |
J20_0473B24: | 人の眼中には。八家九宗の敎行も無用の贅疣なり。 |
J20_0473B25: | 捨閉閣抛するに些の愛惜の心に殘るなし。止觀遮那 |
J20_0473B26: | の靈峰も易行坦途に比すべくもあらず。居りて益な |
J20_0473B27: | ければ速かに降るに如かず。玆に三十年來の山僧生 |
J20_0473B28: | 活を廢め。比叡山を出でて西山廣谷に草庵を結び。 |
J20_0473B29: | 專ら口稱三昧を事とし。來りて敎を乞ふ人人には。 |
J20_0473B30: | 唯淨土の一行を勸進し。自行化他偏に稱名念佛の餘 |
J20_0473B31: | 事なかりき。是れ實に口稱念佛宗たる本宗の開立な |
J20_0473B32: | り創建なり。日本に於ける平民的佛敎の提唱なり。 |
J20_0473B33: | 上人が採られし此の行動の中。自然獨特の敎相判釋 |
J20_0473B34: | あり。宗旨の建立あり。故に承安五年春を以て本宗 |