浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J19_0547A01: | 今ひらくる花の臺より世は春とこそ見そなはすらめ |
J19_0547A02: | との詠により此橋より内は淨土なりとの標示より名 |
J19_0547A03: | つけしともつたへたり |
J19_0547A04: | ○綠影橋は同しき松原の前にありて袋谷の方〓渡せ |
J19_0547A05: | る石橋なり此橋より西を仰き見れば御廟後の山翠杉 |
J19_0547A06: | 老檜しけり交へて潭水を浸し璧甍花柱の林間にそび |
J19_0547A07: | ゆるもかすかにつづきて絶勝の佳水なれは堅卓忍海 |
J19_0547A08: | もめで名つけしとなむ |
J19_0547A09: | ○去塵橋は黑本尊前の蓮池にかかれり御當山淸淨の |
J19_0547A10: | 地たるはもとよりいづれにも隔なしされと此橋より |
J19_0547A11: | 内へはわけて非淨の人をいれしめす常恒に御祈願の |
J19_0547A12: | 淸地なれば昇堂の供僧も垢衣を着せず正制一きは改 |
J19_0547A13: | め奧の院とこころうべきなと『桂華漫筆』にものせ |
J19_0547A14: | ければいつとなくいひならはせるにや |
J19_0547A15: | ○翠柳橋は御成門の内一丁餘の正面にあり是柳の井 |
J19_0547A16: | より流出せる水にて川を翠柳川と名くされは橋名に |
J19_0547A17: | もとれり寬永までは寺境の橋也 |
J19_0547B18: | ○接蓮橋は又芙蓉橋とも 蓮池にかかれる石橋なり池中の蓮 |
J19_0547B19: | 花紅白の色を交接し淸香冷風に飛散せるは不忍の池 |
J19_0547B20: | の小景たり靈玄上人辨天社を島中につくられし時名 |
J19_0547B21: | つけらる |
J19_0547B22: | ○小豆橋は八軒寺町の北にかかれり近き頃まで夜ふ |
J19_0547B23: | け人靜れは小童出て小豆をあらへる音して哭けると |
J19_0547B24: | なむ一説に寬文中或上人北谷に持寮せられしころ小童ありある時小豆をかしぐへきをいひつたへられしに折しも外のわざにまぎれ |
J19_0547B25: | 打すて置けるにたそがれにいたり小豆の粥いかがととはれけるに驚き俄に此川にいたり洗ける折しも寒夜の事にて水氷りてはかはかし |
J19_0547B26: | う洗ひもやらでなき沉けるを隣寮の下男此所にいたり小童をあざおきたぶらかしけるに時うつり寮へもかへりやらで終に心くるしく思 |
J19_0547B27: | ひかさねて水に身を投し死せりそれとは知らで寮主粥をこはれけるに童のよそへ行しに心づき夜の半ころまで遠近の寮をさがさせられ |
J19_0547B28: | しのち此川にて死骸をあけ驚きいとねんころに吊はれしに其のち雨夜はかならず此所に小豆をあらへる音せりとて川をも淺く埋させら |
J19_0547B29: | れしかど折にふれちかきころまでも出けりとなむ |
J19_0547B30: | ○向海橋は大門橋とのみいふ大門の前にかかれり此下の水櫻川 |
J19_0547B31: | の流なり氷流て春や立らんとよめれと今はなかば濁 |
J19_0547B32: | 穢の波流れりいにしへ正東の前に町家もなく濱松の |
J19_0547B33: | なみ木より朝日うつりて海にむかへり慶長の末に名 |
J19_0547B34: | つけしとなむされど世もうつりて名をしるせる文も |