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J2810 華頂誌要 華頂山編 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0171A01: 叡空上人より禀承す。加之、日夜報恩藏に入りて一
J19_0171A02: 切經を披閲し、自佗宗の章疏研尋せすといふことな
J19_0171A03: し。其性の俊秀なる、難解の書と雖も三讀すれは文
J19_0171A04: 義自から通暢す。此を以て早く一代の敎旨に達し、
J19_0171A05: 悉く八宗の要領を得たまへり。
J19_0171A06: 保元元年二十四歳叡空の室を辭し、求法を嵯峨淸凉寺に
J19_0171A07: 祈り、尋いて諸宗の碩學を歷訪して、其蘊奧を叩き、
J19_0171A08: 自解の分齊を述ふ。法相の藏俊、三論の寬雅、華嚴
J19_0171A09: の慶雅等、皆其造詣の深きを嘆賞せさるなし。
J19_0171A10: かくて大師智惠第一の譽街に滿ち、多聞廣學の聞世
J19_0171A11: に普しと雖も、尚ほ自ら三學の器に非さるを覺り、
J19_0171A12: 出離の道に煩ひて寢食安からす。順次解脱の要路を
J19_0171A13: 知らんか爲に、再ひ黑谷に籠居し、周覽年を積み一
J19_0171A14: 切經を披閲し給ふこと五遍。特に善導和尚の疏釋を三
J19_0171A15: 讀して、『觀經散善義』の「一心專念彌陀名號、行住
J19_0171A16: 坐臥不問時節久近、念念不捨者、是名正定之業、
J19_0171A17: 順彼佛願故」の文に至り、豁然として、彌陀大悲
J19_0171B18: の救濟は釋尊出世の本懷にして、凡夫解脱の捷徑は
J19_0171B19: 念佛往生の一門に在りと決擇し、立地に顯密の行業
J19_0171B20: を閣き、專修念佛の一行に歸し、日課稱名六萬遍の
J19_0171B21: 行者となり給へり。建久十年更に一萬遍を加ふ時に 高倉天皇承安
J19_0171B22: 五年三月壽四十三。之を淨土開宗の紀元とす。
J19_0171B23: 是に於て山を下り、庵を洛東吉水の邊當山御影堂の地に結ひ、
J19_0171B24: 專ら淨土の法を演へ、念佛の行を勸めたまふ。機縁
J19_0171B25: の熟するところ化導日に盛にして歸するもの雲霞の
J19_0171B26: 如し。
J19_0171B27: 然れども諸宗の學匠また大師の所立を肯せす。文治
J19_0171B28: 二年の秋大師五十四歳顯眞法印後ち天台座主に補すの請に應し、洛北
J19_0171B29: 大原に赴き、諸宗の碩學三百餘人明遍、證眞、貞慶、智海、湛斆、永辨、靜嚴等其上首
J19_0171B30: たりと會して、一日一夜論談往復を重ね、具さに念佛
J19_0171B31: 往生の時機に相應せる所以を宣説したまへは、滿座
J19_0171B32: 悉く信服し、「形を見れは源空上人、實には彌陀如來
J19_0171B33: の應現か」と感嘆しけるとなん。世に之を大原問答
J19_0171B34: と稱す。是より法運益益開く。

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