浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J19_0171A01: | 叡空上人より禀承す。加之、日夜報恩藏に入りて一 |
J19_0171A02: | 切經を披閲し、自佗宗の章疏研尋せすといふことな |
J19_0171A03: | し。其性の俊秀なる、難解の書と雖も三讀すれは文 |
J19_0171A04: | 義自から通暢す。此を以て早く一代の敎旨に達し、 |
J19_0171A05: | 悉く八宗の要領を得たまへり。 |
J19_0171A06: | 保元元年二十四歳叡空の室を辭し、求法を嵯峨淸凉寺に |
J19_0171A07: | 祈り、尋いて諸宗の碩學を歷訪して、其蘊奧を叩き、 |
J19_0171A08: | 自解の分齊を述ふ。法相の藏俊、三論の寬雅、華嚴 |
J19_0171A09: | の慶雅等、皆其造詣の深きを嘆賞せさるなし。 |
J19_0171A10: | かくて大師智惠第一の譽街に滿ち、多聞廣學の聞世 |
J19_0171A11: | に普しと雖も、尚ほ自ら三學の器に非さるを覺り、 |
J19_0171A12: | 出離の道に煩ひて寢食安からす。順次解脱の要路を |
J19_0171A13: | 知らんか爲に、再ひ黑谷に籠居し、周覽年を積み一 |
J19_0171A14: | 切經を披閲し給ふこと五遍。特に善導和尚の疏釋を三 |
J19_0171A15: | 讀して、『觀經散善義』の「一心專念彌陀名號、行住 |
J19_0171A16: | 坐臥不問時節久近、念念不捨者、是名正定之業、 |
J19_0171A17: | 順彼佛願故」の文に至り、豁然として、彌陀大悲 |
J19_0171B18: | の救濟は釋尊出世の本懷にして、凡夫解脱の捷徑は |
J19_0171B19: | 念佛往生の一門に在りと決擇し、立地に顯密の行業 |
J19_0171B20: | を閣き、專修念佛の一行に歸し、日課稱名六萬遍の |
J19_0171B21: | 行者となり給へり。建久十年更に一萬遍を加ふ時に 高倉天皇承安 |
J19_0171B22: | 五年三月壽四十三。之を淨土開宗の紀元とす。 |
J19_0171B23: | 是に於て山を下り、庵を洛東吉水の邊當山御影堂の地に結ひ、 |
J19_0171B24: | 專ら淨土の法を演へ、念佛の行を勸めたまふ。機縁 |
J19_0171B25: | の熟するところ化導日に盛にして歸するもの雲霞の |
J19_0171B26: | 如し。 |
J19_0171B27: | 然れども諸宗の學匠また大師の所立を肯せす。文治 |
J19_0171B28: | 二年の秋大師五十四歳顯眞法印後ち天台座主に補すの請に應し、洛北 |
J19_0171B29: | 大原に赴き、諸宗の碩學三百餘人明遍、證眞、貞慶、智海、湛斆、永辨、靜嚴等其上首 |
J19_0171B30: | たりと會して、一日一夜論談往復を重ね、具さに念佛 |
J19_0171B31: | 往生の時機に相應せる所以を宣説したまへは、滿座 |
J19_0171B32: | 悉く信服し、「形を見れは源空上人、實には彌陀如來 |
J19_0171B33: | の應現か」と感嘆しけるとなん。世に之を大原問答 |
J19_0171B34: | と稱す。是より法運益益開く。 |