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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0115A01: 無能和尚行業記上
J18_0115A02:
J18_0115A03: 師諱は學運。字は良崇。世をのがれて後は。みづか
J18_0115A04: ら守一無能とぞ號せられける。世姓は矢吹氏奧州石
J18_0115A05: 川郡須釜郷の人なり。天性篤實にして身を守ること
J18_0115A06: 醇謹に。姿容美和にして慈仁の心厚く。志節高簡に
J18_0115A07: して。流俗に群せず。曾て父矢吹氏。男子あまたあ
J18_0115A08: りければ。大木氏某に約して。養子となしぬ。然る
J18_0115A09: に師生年十四の春の頃より。人の勸めにもよらざり
J18_0115A10: しかど。歸佛の念をのづから發り。晨昏佛前に向ひ
J18_0115A11: て念佛し。阿彌陀經普門品など讀て。二時の念誦。
J18_0115A12: 曾ておこたりなくそ侍る。然るべき宿善の内に催し
J18_0115A13: けるにや。幼年の昔より。何となく世相をはかな
J18_0115A14: み。釋氏の風儀をしたふ心のみ深くて。常には佛神
J18_0115A15: にも。ひたすら出塵の身とならん事をぞ祈請せられ
J18_0115A16: ける。かかりければ。十六歳の春。みづから髻を剪
J18_0115A17: て。まさに本意を遂んと思はれしかど。かたがた碍
J18_0115B18: る事なん侍りて。其年はむなしく心の外に暮行ぬ。
J18_0115B19: 翌年十七歳の春。三月十四日。伊達郡大安寺良覺上
J18_0115B20: 人に投じて。遂に出家得度の素意を遂げ。淨土の章
J18_0115B21: 疏を習讀せらる。天資聰敏にして。英氣秀發してぞ
J18_0115B22: 見え侍る。同年五月籍を州の山崎梅福山に通じて修
J18_0115B23: 學せり。十八歳の秋八月羽州龜岡の文殊に參籠する
J18_0115B24: こと七箇日。大聖の冥助を仰ぎ。早く如實智を得て。
J18_0115B25: 二利の所願を成滿せん事を祈らる。爾しより後。飯
J18_0115B26: 沼壽龜山。武江三縁山など所所の敎黌にしばしば籍
J18_0115B27: を移されしかども。若は學若は行。孜孜として寸陰
J18_0115B28: を惜み。虚しく日を送らるる事なかりき。されば螢
J18_0115B29: 雪鑚仰の扉には。竊に曩祖の蘊奧を探り。論議商量
J18_0115B30: の筵には。曾て戴憑が重席を學べり。十九歳の夏。
J18_0115B31: 下總國に遊學の時成田山の不動等にまうでで。七日
J18_0115B32: 糓を斷じ。道學の成就をぞ祈られける。不動使者秘
J18_0115B33: 密法を案ずるに。若求無上出世菩提者當淸淨梵
J18_0115B34: 行一心精進。當得種種不思議三昧。不思議境界。

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