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J2620 以八上人行状記 素信 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0766A01: 光明院開基以八上人行狀記
J17_0766A02:
J17_0766A03: 上人諱は存易字は以八。別に專求西と號す。行蓮社
J17_0766A04: 信譽は本宗恒式の稱謂なり。奧州岩城の産にしてち
J17_0766A05: ちは賀氏法名道祐母は幡氏法名妙善夫婦ともに子なきことをな
J17_0766A06: げき心をひとつにして月天子に祈願し。毎月十五夜
J17_0766A07: 二十三夜にはことに丹誠をぬきんで念願せられける。
J17_0766A08: そのしるにや有けん。はたして幡氏懷妊し。天文八
J17_0766A09: 己亥歳男子を誕生す。天性質直にして孩稚のころよ
J17_0766A10: り世の童子にことなりき。かりそめにも戯弄をこのま
J17_0766A11: ず。ただ出家學道を願望せり。父母もまたその生質
J17_0766A12: の奇異なるを見てむなしく塵網繫縛せんことをおし
J17_0766A13: み。十一歳の春同州能滿寺の天蓮社存洞上人にあた
J17_0766A14: へて弟子と成しぬ。剃髮染衣して名を存易と號す。
J17_0766A15: 存洞は則ち師の叔父なりければ。心をつくして敎示
J17_0766A16: せらる。師學問の性靈利にして一を聞て十をしり。
J17_0766A17: 耳に觸るところ憶持してわするることなし。
J17_0766B18: ○本州大澤の圓通寺は淨宗の學肆なりければ。修學
J17_0766B19: のはじめ笈を負ふて此寺にゆき粗宗義を習學せらる
J17_0766B20: 時に上總國生實の大巖寺開山道譽貞把上人は當時の
J17_0766B21: 名匠一宗の雄才なりければ。師これをしたふて座下
J17_0766B22: にゆき隨侍し晝夜孜孜として法理を研覈す。よつて
J17_0766B23: いくほどなく其學内外に通じその智二門に明なり上
J17_0766B24: 人も勝れたる法器なることをよろこびて。一家の奧旨
J17_0766B25: 底を盡して授與したまふ。なをも修學を勵したまは
J17_0766B26: ば大業をもとげらるべき器なりけれど。素より名利
J17_0766B27: をいとひ隱遁に志ふかかりければ。つねに一擧萬里
J17_0766B28: 絶域他方ならんことをのみをもひたまひぬ。遂に行年
J17_0766B29: 廿八歳のなつ。永く師席を辭し舊里をはなれて抖擻
J17_0766B30: 行脚の身となれり。其とき兄弟にしめしたまふとて
J17_0766B31: かきのこし置たまへる文にいはく。佛法修行はいか
J17_0766B32: にも攝心五十年も三十年も閑に工夫思案するが第一
J17_0766B33: なり。世間をば打すつる心もちにて思案一片に心を
J17_0766B34: なすべく候たとひ悟道得法するとても。修行なくし

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