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J2580 袋中上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0726A01: 袋中上人傳
J17_0726A02:
J17_0726A03: 上人名は袋中字は良定或は辨蓮社或入觀と云ふは別
J17_0726A04: 號也奧州岩城郡の人なり父は賀氏法名道祐母は幡氏法名妙喜
J17_0726A05: 母ともに心淸閑にして内には三寶に歸し外には忠貞
J17_0726A06: を專にす男子二人女子二人あり以八和尚は嫡子今袋
J17_0726A07: 中上人は第三の子なり抑上人降誕の首末を尋ぬれば
J17_0726A08: 同國に能滿寺といふ精舍あり虚空藏菩薩の肖像を安
J17_0726A09: 置す妙相圓滿にして端嚴無比なり誠に又なき尊像な
J17_0726A10: れば寶龕常に祕閉して金鎻かたく守れり或時幡氏志
J17_0726A11: 願の事ありて一七日を期して參籠し給ひしに滿散の
J17_0726A12: 夜の夢に團團たる月輪口中に入たまひ胎中搖動すと
J17_0726A13: 思ひてやがて夢覺ぬ夜もやうやく深くかかげし灯も
J17_0726A14: 絶絶なりしに擧身より輝赫たる光明出でで幽室の
J17_0726A15: 内を照すに晝よりもなをあきらかなりこれより有身
J17_0726A16: の心地しぬれば四威儀に和ぎてつつしみをぞくわへ
J17_0726A17: られけり。
J17_0726B18:
J17_0726B19: 十月懷抱の間母身安泰にしてて後奈良院御宇天文二
J17_0726B20: 十一年正月壬子の日に上人誕生したまひぬ相好端正
J17_0726B21: にして容貌溢潤なり光を伸る眼目笑を含む顏面みな
J17_0726B22: 秀逸の相ありてかつて塵中の物にあらずしかるに出
J17_0726B23: 胎の後この子右手を握りてひらかす闔家皆あやしみ
J17_0726B24: いたり三七日の後に拳手をひらく掌の内虚空菩薩の
J17_0726B25: 肖像あり又降誕の日時刻をたがはす能滿寺の虚空藏
J17_0726B26: 菩薩の寶龕人の寶鑰を開かざるにをのづから開きぬ
J17_0726B27: 見聞の人奇異の思をなしてこれをたうとまざるはな
J17_0726B28: し父母鐘愛淺からずして小字を德壽丸とぞ付られけ
J17_0726B29: る。
J17_0726B30:
J17_0726B31: 上人四五才の時稚童とむれいて遊びたまふにひとり
J17_0726B32: 毎によの戲をなさすただ石を積みては寶塔と名付壁
J17_0726B33: にゑがいては佛像をかたどり其友童にをしへてとも
J17_0726B34: に拜ましむ又六歳の頃より毎朝東方に向ひて日輪を

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