浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0698A01: | 數をしらず。其亡魂日夜に來りて我を責る苦しみ堪 |
J17_0698A02: | がたし。あはれ上人是をたすけ給へと願はる。上人 |
J17_0698A03: | 告ていはく予は頑魯にして公を救ふ神力なし。唯彌 |
J17_0698A04: | 陀超世の本願に任せ十念佛名を授くべしとて。則ち |
J17_0698A05: | 名號并に十念を授け。法號を淨光院香譽宗攝樂意法 |
J17_0698A06: | 師と授與し殺害する亡靈等にも十念を授けて回向し |
J17_0698A07: | 玉ふ。時に太閤慇懃に感謝して去られたり。其時太 |
J17_0698A08: | 閤へ授與せられし十念名號。今現に當山にあり。太 |
J17_0698A09: | 閤此時上人の利濟を蒙られしゆへにや。其後太閤所 |
J17_0698A10: | 持の。釋尊左眼瞳子の舍利。展轉して當山に納る。 |
J17_0698A11: | 豈不思議にあらずや。顧ふに是法乳の恩に報ふの所 |
J17_0698A12: | 爲ならんかし。 |
J17_0698A13: | ○上人曾て彌陀直授の傳燈。前三重後三重等の口訣 |
J17_0698A14: | あり。特に布薩の奧義自染筆嚴重にして自他の往生 |
J17_0698A15: | 專修念佛の一行に决歸し給へり。是當山不共の傳 |
J17_0698A16: | なり。璽書布薩相承の者には蓮誓號を許可し給ふ。 |
J17_0698A17: | 是を一流の規矩と定められたり。又上人所所山居の |
J17_0698B18: | 時は樹下石上に坐し。本尊をも安ぜず聖敎をも持せ |
J17_0698B19: | ず香花をも供せず。但口稱念佛の外他事なし。古語 |
J17_0698B20: | に賀古の敎信は。西には垣もせず極樂と中をあけ合 |
J17_0698B21: | せて。本尊をも聖敎をも持せず。僧にもあらず俗に |
J17_0698B22: | もあらぬ形にて。常に西に向ひ念佛して其餘は忘れ |
J17_0698B23: | たるがごとしといへるに同じ。凡そ上古巖穴修道の |
J17_0698B24: | 大士。大峯伇行者越智山泰澄のことき。皆皆是のごと |
J17_0698B25: | くなるへし。本尊持經香花燈明の備あるべからず。 |
J17_0698B26: | ○洛陽大雲院の貞安和尚は當時の豪傑なり。上人の |
J17_0698B27: | 行狀異相なることを聞て。難破を加へんか爲に伴僧 |
J17_0698B28: | と共に俗形となり當山に至る。上人既に豫め此由を |
J17_0698B29: | 知りて自から門外に出迎へ。彼等に對して異相をあ |
J17_0698B30: | らはし。彼等が巧む所の旨趣を説玉ふ。時に主伴共 |
J17_0698B31: | に是を見聞して凡人にあらさる事を知り。深く慙愧 |
J17_0698B32: | の心を起し。慇懃に懺謝して退きぬ。 |
J17_0698B33: | ○上人の門弟多かる中にも。念光法師は殊に深く師 |
J17_0698B34: | 恩を重んじ。自も木食長齋にして常隨給仕せられけ |