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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0698A01: 數をしらず。其亡魂日夜に來りて我を責る苦しみ堪
J17_0698A02: がたし。あはれ上人是をたすけ給へと願はる。上人
J17_0698A03: 告ていはく予は頑魯にして公を救ふ神力なし。唯彌
J17_0698A04: 陀超世の本願に任せ十念佛名を授くべしとて。則ち
J17_0698A05: 名號并に十念を授け。法號を淨光院香譽宗攝樂意法
J17_0698A06: 師と授與し殺害する亡靈等にも十念を授けて回向し
J17_0698A07: 玉ふ。時に太閤慇懃に感謝して去られたり。其時太
J17_0698A08: 閤へ授與せられし十念名號。今現に當山にあり。太
J17_0698A09: 閤此時上人の利濟を蒙られしゆへにや。其後太閤所
J17_0698A10: 持の。釋尊左眼瞳子の舍利。展轉して當山に納る。
J17_0698A11: 豈不思議にあらずや。顧ふに是法乳の恩に報ふの所
J17_0698A12: 爲ならんかし。
J17_0698A13: ○上人曾て彌陀直授の傳燈。前三重後三重等の口訣
J17_0698A14: あり。特に布薩の奧義自染筆嚴重にして自他の往生
J17_0698A15: 專修念佛の一行に决歸し給へり。是當山不共の傳
J17_0698A16: なり。璽書布薩相承の者には蓮誓號を許可し給ふ。
J17_0698A17: 是を一流の規矩と定められたり。又上人所所山居の
J17_0698B18: 時は樹下石上に坐し。本尊をも安ぜず聖敎をも持せ
J17_0698B19: ず香花をも供せず。但口稱念佛の外他事なし。古語
J17_0698B20: に賀古の敎信は。西には垣もせず極樂と中をあけ合
J17_0698B21: せて。本尊をも聖敎をも持せず。僧にもあらず俗に
J17_0698B22: もあらぬ形にて。常に西に向ひ念佛して其餘は忘れ
J17_0698B23: たるがごとしといへるに同じ。凡そ上古巖穴修道の
J17_0698B24: 大士。大峯伇行者越智山泰澄のことき。皆皆是のごと
J17_0698B25: くなるへし。本尊持經香花燈明の備あるべからず。
J17_0698B26: ○洛陽大雲院の貞安和尚は當時の豪傑なり。上人の
J17_0698B27: 行狀異相なることを聞て。難破を加へんか爲に伴僧
J17_0698B28: と共に俗形となり當山に至る。上人既に豫め此由を
J17_0698B29: 知りて自から門外に出迎へ。彼等に對して異相をあ
J17_0698B30: らはし。彼等が巧む所の旨趣を説玉ふ。時に主伴共
J17_0698B31: に是を見聞して凡人にあらさる事を知り。深く慙愧
J17_0698B32: の心を起し。慇懃に懺謝して退きぬ。
J17_0698B33: ○上人の門弟多かる中にも。念光法師は殊に深く師
J17_0698B34: 恩を重んじ。自も木食長齋にして常隨給仕せられけ

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