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J2500 向阿上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0593A01: り。
J17_0593A02: されば寺門の棟梁となり衆徒の領袖たりといへとも
J17_0593A03: 本よりこの世をはかなみ後生をおそるるこころふか
J17_0593A04: ふしてひそかに淨土の敎文をひらきしきりに西方の
J17_0593A05: 資糧をたくはへ給ふ遂に弘安十年御とし二十三の秋
J17_0593A06: 入相の鐘にうちさそはれていつちともなくさすら
J17_0593A07: ひいてて西の坂をのほり都のかたへ越へ給ふに如意
J17_0593A08: 寺の前にいたりて野分の風はけしくふきてすすろに
J17_0593A09: あはれもまさりけれはしはしうちなかめて大門の柱
J17_0593A10:
J17_0593A11: おもひたつ衣の色はあさくとも
J17_0593A12: かへらしものよ墨染の袖
J17_0593A13: と一首を書ととめてやかて洛陽にいて花開院にして
J17_0593A14: みつから交衆の花服をあらためて隱遁の墨衣となり
J17_0593A15: すなはち是心と改名し給へり。
J17_0593A16: さりけれは偏に菩提の直路にをもむき九重の外北白
J17_0593A17: 川のほとりに寂寞の柴の扉をしめ法蓮上人のいにし
J17_0593B18: へをしたひてひたすら念佛し給ひにけり。
J17_0593B19: 其後吉水の法流をしたひて禮阿和尚に謁しほとなく
J17_0593B20: 宗脈をうけて向阿上人と號し淸淨花院に住して其義
J17_0593B21: をひろめ給ふ玄眞聖阿圓寂なといふ上人もみな門下
J17_0593B22: にありすへて洛中の貴賤あふきうやまひて化導ひろ
J17_0593B23: くさかんなりけり。
J17_0593B24: 月にむら雲あり花に風あるならひにて正法すてに流
J17_0593B25: 布すといへとも邪師なを徘徊してややもすれは無智
J17_0593B26: の道俗をまとはすことをかなしみ後世の龜鏡にせむ
J17_0593B27: かために五代相傳の正脈をしるし往生至要訣となつ
J17_0593B28: けて上足の玄眞上人にさつけ給へり時に延慶二年卯
J17_0593B29: 月五日なり其後正和五年正月十一日にかさねて圓寂
J17_0593B30: のために要訣をさつけ元弘元年霜月廿九日聖阿のた
J17_0593B31: めにさつけ給へり親筆の本淨花院にありなを上人の
J17_0593B32: 親跡世におほし筆躰まことに遒婉なり。
J17_0593B33: 元亨のころ淨土門の餘流まちまちなるをあやしみ心
J17_0593B34: あらん人もかななけきあはせまほしとおほしていに

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