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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0222A01: ば。上人仰られて云。たとへばひが事いふものあり
J17_0222A02: て。あの池の蓮花を。あれは蓮花にあらず。梅ぞ櫻
J17_0222A03: ぞといはんには。汝はその定に蓮花にはあらざりけ
J17_0222A04: る。まこと梅なり櫻なりと思はんずるか。隨蓮申て
J17_0222A05: いふ。現に蓮花にて候はんものをば。いかに人申と
J17_0222A06: もいかでか信候べきと申に。上人曰。念佛の義また
J17_0222A07: 如此。源空汝に念佛して往生する事は。うたがひな
J17_0222A08: しといひし事を信たるは。蓮花を蓮花と思はんがご
J17_0222A09: とし。ふかく信じてとかくの沙汰にをよばず。ただ
J17_0222A10: 念佛を申べきなり。惡義邪見の梅櫻を信ずべからず
J17_0222A11: と被仰と見て夢さめぬ。其時隨蓮昔の御詞をふか
J17_0222A12: く信じて。少きの不審なく日來の疑のこりなく散じ
J17_0222A13: て。一心をこらし。臨終の用心亂る事なくして。兩
J17_0222A14: 眼閉るごとし。遂にやうなきをやうとして。行やす
J17_0222A15: くぞ行ける。
J17_0222A16: 民部卿入道往生事
J17_0222A17: 民部卿入道範光は。後鳥羽院の寵臣也。然に最後の
J17_0222B18: 時。御幸なりて。往生の實否いかがおもひ定むべき
J17_0222B19: と仰下されけるに。御返事に申て云。往生更に疑所
J17_0222B20: 侍らず。そのゆへは去夜の夢に。病の床に沙門あり。
J17_0222B21: 誰の人ぞとたづぬるに。僧云。我は是れ源空也。唐
J17_0222B22: 土にては善導と名付。此土に來て衆生を利する事。
J17_0222B23: 既にもて三ケ度也。今汝に命終の期を告げん爲に來
J17_0222B24: 臨する所也。明後日午の尅は其期なるべしといふと
J17_0222B25: みて夢覺ぬ。すでに此告をかうぶるゆへに往生疑ざ
J17_0222B26: る由。其翌日午尅。たがはず正念に住し念佛して往
J17_0222B27: 生を遂しかば。眼前の奇特。實に不思議なりけりと
J17_0222B28: ぞ申合ける。
J17_0222B29: 公胤僧正往生事
J17_0222B30: 上人往生の後五ケ年を送りて。建保四年丙子四月廿六
J17_0222B31: 日の夜。公胤僧正の夢に上人告曰。
J17_0222B32: 往生之業中。一日六時刻。一心不亂心。功驗最
J17_0222B33: 第一。六時稱名者。往生必決定。雜善不決定。專
J17_0222B34: 修定善業。源空爲孝養。公胤能説法。感喜不可

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