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J2380 四巻伝 耽空 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0054A01: 州を照す、時を測て光を迴す。北州に日かくやくた
J17_0054A02: れば、南州にかげのちかづくより、須彌の岑、なく
J17_0054A03: 鷄の可見路と鳴は、暗きやみ漸くはれて、みち見え
J17_0054A04: ぬべしと囀也。佛敎も又正法千年は、印土に盛にし
J17_0054A05: て、像法のはじめ、漢につたはりてのち、用明天王
J17_0054A06: の儲君、舍利をもて生給しを、佛の誕生に准ずべき
J17_0054A07: 歟。其謂何者、舍利、現身に説法し、神變をしめし
J17_0054A08: 給事、佛のごとく也。これを以、我國の正法のはじ
J17_0054A09: めとすべきか。たとへば、父、宮こにして、よをは
J17_0054A10: やくし、子、他國にまよふて、程をへてをどろく、
J17_0054A11: 亡日、年序をへにけれども、禁忌はきくよりをこり、
J17_0054A12: 孝養はあらたなれども、中隱はふるき跡也。爰一切
J17_0054A13: 衆生のちち、卜萬餘里のにしにかくれ、その子、三
J17_0054A14: 箇國の東に忍より、藤衣の、たちまちにいろをかへ
J17_0054A15: るありさま、たら葉の面に、かきをきたまへる遺敎、
J17_0054A16: ひろしといへども、おほくは西方の寶樹、寶池の水
J17_0054A17: 木、宮殿樓閣のありさま、飯食經行ゆたか也。衣は、
J17_0054B18: そめ、すすぎ、ぬはねども、春夏秋冬、身をかざり、
J17_0054B19: 藥は、のみ、くひ、つけねども、心になやむことな
J17_0054B20: く、つつがなし。かかる都へさそはんと、金烏、雲
J17_0054B21: の上よりかけり、銀兎、野外にほとばしる。
J17_0054B22: この息、襁褓のなかよりいでて、竹馬に
J17_0054B23: 鞭うちて、あそぶところ。
J17_0054B24: 竹馬嬉戲の圖
J17_0054B25: 保延七年辛酉はるのころ、時國朝臣、夜打にあへる刻、
J17_0054B26: ふかききずをかふむりて、いまはかぎりになりにけ
J17_0054B27: れば、九歳なる子に、われは、此きずにて、空くみま
J17_0054B28: かりなんとす。しかりと云て、敵人をうらむる事な
J17_0054B29: かれ。是前世のむくひ也。猶此報答を思ならば、轉
J17_0054B30: 展無窮にして、世世生生にたたかひ、在在處處にあ
J17_0054B31: らそふて、輪迴たゆる事なかるべし。凡生ある物は、
J17_0054B32: みな、死をいたむ事かぎりなし。我このきずをいた
J17_0054B33: む、人又いたまざらんや。我此命ををしむ、人あに
J17_0054B34: をしまざらんや。わがみにかへて、人の思をしるべ
J17_0054B35: き也。むかし、はからざるに、もののいのちをころす

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