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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0004A01: てぞ還ける。終に天養二年乙丑の春。比叡山西塔の北
J17_0004A02: 谷。持法房源光の所に送遣。其書狀に云。進上大聖
J17_0004A03: 文殊の像一體と。源光。此消息を見て。文殊の像を尋
J17_0004A04: るに。像は無して。年十二三小兒のみ來臨す。其時
J17_0004A05: 源光はやく意得て文殊の像とは。此兒を讚ならんと。
J17_0004A06: 奇特の思をなし。喜で一文を授るに。輒十義を悟け
J17_0004A07: れば。源光。我はこれ短才淺智なり。碩學に屬て。
J17_0004A08: 深理を窮しむべしとて。功德院肥後阿闍梨皇圓の許
J17_0004A09: に送遣す。彼阿闍梨は。參河權守重亮の嫡男。少納
J17_0004A10: 言資隆朝臣の阿兄。隆寬律師の伯父。皇覺法橋の弟
J17_0004A11: 子にして。當時の名匠。台嶺の賢哲なり。此兒修學
J17_0004A12: 夜に積。才智日に瑩。萬人異を歎。一山同怪めり。
J17_0004A13: 第五 受戒樂求閑居門
J17_0004A14: 久安三年丁卯仲冬八日に。出家受戒し給ぬ。時に年十
J17_0004A15: 五歳なり。有時師に白て言。出家受戒の本望已に足
J17_0004A16: ぬ。今はすなはち居を山林に卜。跡を煙霞に暗さん
J17_0004A17: と。師。これを聞て。受難人身を受たり。苟に遁世
J17_0004B18: せらるべし。又遇難佛法に遇り。何〓〓〓せざらん
J17_0004B19: や。登山の驗に。六十卷を讀て後。本意を遂べしと
J17_0004B20: 諫ければ。われ閑居を欣樂ことは。名利の散亂を免
J17_0004B21: れ。靜に經論章疏を學せん爲なり。貴命はなはだ背
J17_0004B22: 難。修學もとも本意なりとて。生年十六の春。始て
J17_0004B23: 三大部を稟承し。螢雪の勤懈怠なく。繩錐の勵勇猛
J17_0004B24: にして數數睡眠を除。三箇年をへて。六十卷の奧義
J17_0004B25: を究。智惠明達にして。併先哲に超給へり。
J17_0004B26: 第六 發心離山住谷門
J17_0004B27: 久安六年庚午九月十二日。生年十八歳にして。始て黑
J17_0004B28: 谷の禪室に入り。慈眼房叡空上人をもて師とす。彼
J17_0004B29: 師は。瑜伽祕密の眞言。玉を瑩。圓頓大乘の戒律。
J17_0004B30: 鏡を懸。學解輩なく。道心最深して。誠に師の位に
J17_0004B31: 足れり。上人の發心を聞て隨喜し讚して。仁者少年
J17_0004B32: にして。早出離の心を發せり。實に法爾法然の上人
J17_0004B33: なれば。法然をもて房號とすべし。實名は源空とす。
J17_0004B34: これ源光の上の字と。叡空の下の字とを。拾取とぞ

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