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J1410 拾遺和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0633A01: あへり。無常念念にいたり。老少きはめて不定なり。
J09_0633A02: やまひきたらん事かねてしらす。生死のちかづく事
J09_0633A03: たれかおほえん。もともいそくへし。はけむへし。
J09_0633A04: 念佛に三心を具すといへるも。これらのことはりを
J09_0633A05: はいです。三心といは。一には至誠心。二には深心
J09_0633A06: 三には廻向發願心なり。至誠心とは。眞實の心也。
J09_0633A07: 往生をねかひ念佛を修せんにも。心のそこより思ひ
J09_0633A08: たちて行するを。至誠心といふ。心におもはざる事
J09_0633A09: を外相ばかりにあらはすを。虚假不實といふ也。心
J09_0633A10: のうちに又ふたたび生死の三界に返らしとおもひ。
J09_0633A11: 心のうちに淨土にむまれむと思ひて念佛すれは。往
J09_0633A12: 生すへし。此ゆへに外にはその相も見えざるか往生
J09_0633A13: する事あり。外にその相みゆれとも往生せざるもあ
J09_0633A14: り。ただ心につらつら有爲無常のありさまをおもひ
J09_0633A15: しりてこの身をいとひ。念佛を修すれは。自然に至
J09_0633A16: 誠心をは具する也。深心と云は。信心也。わか身は
J09_0633A17: 罪惡生死の凡夫也と信じ。彌陀如來は本願をもて。
J09_0633B18: かならす衆生を引接し給ふと信して。うたがはす。
J09_0633B19: 念佛せんものむまれすは。正覺をとらじとちかひて
J09_0633B20: すでに正覺をなり給へは。稱念するものはかならす
J09_0633B21: 往生すと信すれは。自然に深心をは具する也。廻向
J09_0633B22: 發願心といふは。修するところの善根を極樂に廻向
J09_0633B23: して。かしこに生せんとねがふ心也。別の義あるへ
J09_0633B24: からす。三心といへる名は。各別なるに似たれとも。
J09_0633B25: 詮するころは。たた一向專念といへる事あり。一す
J09_0633B26: ちに彌陀をたのみ念佛を修して。餘の事をまじへさ
J09_0633B27: る也。そのゆへは。壽命の長短といひ。果報の深淺と
J09_0633B28: いひ。みな宿業にこたへたる事をしらすして。いたづ
J09_0633B29: らに佛神にいのらんよりも。一すちに彌陀をたのみ
J09_0633B30: てふた心なけれは。不定業をは轉し决定業をは。來迎
J09_0633B31: し給ふへし。無益のこの世をいのらんとて大事の後
J09_0633B32: 世をわするる事は。さらに本意にあらす。後世のため
J09_0633B33: に念佛を正定の業とすれは。是をさしをきて餘の行
J09_0633B34: を修すべきにあらされは。一向專念なれとはすすむ

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