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J1400 和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0553A01: とにもかくにも念佛して往生すといふ事を。ふかく
J09_0553A02: 信じてうたがはぬを。深心とはなづけて候なり。
J09_0553A03: 三に廻向發願心といふは。是亦別の心には候はす。
J09_0553A04: わか所修の行業を。一向に極樂に廻向して。往生を
J09_0553A05: ねがふ心也。かくのごときの三心を具して。かなら
J09_0553A06: す往生すへし。此心一つもかけぬれは。往生せずと
J09_0553A07: 善導は釋し給へる也。たとひ眞實の心ありてうへを
J09_0553A08: かざらすとも。佛の本願をうたがはは。すでに深心
J09_0553A09: かけたる念佛也。たとひ疑心なくとも。外をかざり
J09_0553A10: て内に實の心なくは。至誠心かけたる人なるへし。
J09_0553A11: たとひこの二心を具して。かざる心も疑心もなくと
J09_0553A12: も。極樂にむまれむとおもふ心なくは。廻向發願心
J09_0553A13: かけぬへし。三心を意えわかつ時には。かくのことく
J09_0553A14: 別別なる樣なれとも。詮ずるところは。眞實の心を
J09_0553A15: をこして。ふかく本願を信じて。往生をねがふ心を。
J09_0553A16: 三心具足の心とは申也。誠に是ほどの心たにも具足
J09_0553A17: せすしては。いかか往生ほどの大事をばとげ給ふへ
J09_0553B18: きや。此心は。申せば又やすき事にて候也。これを
J09_0553B19: かやうに意えしらねばとて。又え具足せぬ心にては
J09_0553B20: 候はぬ也。その名をだにもしらぬものも。この心を
J09_0553B21: はそなへつへく候。又よくよくしりたらん人の中に
J09_0553B22: も。そのままに具せぬも候ひぬへき心はへにて候
J09_0553B23: 也。されはこそいふに甲斐なき人數ならぬものども
J09_0553B24: の中よりも。たたひらに念佛申すはかりにて。往生
J09_0553B25: したりといふ事は。むかしより申つたへたる事にて
J09_0553B26: 候へ。それらはみなしらねとも三心を具したる人に
J09_0553B27: てありけりと意えらるる事にて候也。又年ころ念佛
J09_0553B28: 申たる人の。臨終のわろき事の候は。さきに申つる
J09_0553B29: やうに。うへばかりをかざりて。たうとき念佛者と人
J09_0553B30: にいはれんとのみ思ひて。下にはふかく本願をも信
J09_0553B31: ぜす。まめやかに往生をもねがはぬ人にてこそは候
J09_0553B32: らめと意えられ候也。されは此三心を具せざるゆへ
J09_0553B33: に。臨終もわろく。往生もせぬ事にて候也としろし
J09_0553B34: めすへき也。かく申候へは。さては往生は大事の事

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