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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0231A01: は白樂天。吾朝には菅丞相なり。在纒出纒みな火宅な
J09_0231A02: り。眞諦俗諦しかしながら水驛なりとぞ。仰られけ
J09_0231A03: る。さて禪定殿下。土佐の國迄はあまりはるかなる程
J09_0231A04: なり。わが知行の國なればとて。讃岐の國へぞ移し奉
J09_0231A05: られける。御なごりやるかたなく思召れけるにや。
J09_0231A06: 禪閤御消息を送られけるに。
J09_0231A07: ふりすててゆくはわかれのはしなれと
J09_0231A08: ふみわたすへきことをしそおもふ
J09_0231A09: と侍りければ。上人御返事。
J09_0231A10: 露の身はここかしこにてきえぬとも
J09_0231A11: こころはおなしはなのうてなそ
J09_0231A12: と。返りしめし給ひて。鳥羽の南の門より。川舟に
J09_0231A13: 召て。くだり給ふ。攝津の國經か島。播磨の國。高
J09_0231A14: 砂の浦。おなじく室のとまり。讃岐の國。鹽飽入道
J09_0231A15: 西忍が舘に至るまで。おほくの人人を結縁敎化し給
J09_0231A16: ひ。つゐに同國子松の庄におちつき給ひぬと。あは
J09_0231A17: れ悲しき事ならずや。拾遺漢語燈ノ錄第十一之卷。今と全く同じ。是の如きの艱
J09_0231B18: 厄苦難を忍受し玉ふ。勇猛精進なる御志を遂させ玉
J09_0231B19: ふ。大師の御遺訓なれば。仰て信じ俯して信して。
J09_0231B20: 一向稱名すべく社思ほゆれ。古人言る事有り。孔明
J09_0231B21: が出師の表を讀で。涙を下さざる者は。是の人必ず
J09_0231B22: 不忠ならん。李密が陳情の表を讀で。涙を下さざる者
J09_0231B23: は。是の人必ず不孝ならんと。是皆仁愛の心なく。
J09_0231B24: つれなき人成るべし。今是御遺誓の貴き事を聞なが
J09_0231B25: らも。心に染ず。等閑にして但信稱名せぬ者は。究
J09_0231B26: て無道心の人也。邪見の人なり。高慢の人也。是を
J09_0231B27: 枯稿の衆生と云ふ。たとひ墨染の袖長くとも。此御遺
J09_0231B28: 誓を感ぜぬ人は。其心鬼なるべし此一段。湛澄上人の諺註を轉用す。嗚呼
J09_0231B29: 悲ひ哉。痛ひ哉。大悲終極の一紙を外にして。東西
J09_0231B30: に馳走し。南北に迷惑す。かく眞成に。出離の徑路
J09_0231B31: を敎へ玉ふに。往ざるは是誰が過ぞや。必ず必ず後
J09_0231B32: の悔ひ思はずは有べからず。
J09_0231B33: 風にちる松の落葉を吉水の
J09_0231B34: なかれのすゑにかきあつめぬる

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