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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0029A01: け玉へと思ふ時。妄念はおこちず。妄念おこる時。
J09_0029A02: たすけ玉へを忘る。されども願行相續の意樂に住す
J09_0029A03: る程の人は。妄念おこるとしる時。やがて助玉へと
J09_0029A04: 思ひ返すゆへに。念佛は常に主人となりて。妄念はい
J09_0029A05: つも客人となれば往生の障とまではならず。等起の
J09_0029A06: 思が。よく善惡の業を成ずといへば。意樂を以て主人
J09_0029A07: とすべし。刹那の妄念は。業を成ぜずといへば。念
J09_0029A08: 念生滅の任運無記の妄念は。みな客人にして。散地
J09_0029A09: の凡夫の心の癖なり、あへて念佛の業道を碍ぐるこ
J09_0029A10: と能はず。既に凡夫往生を許す。何ぞ妄念を嫌はん
J09_0029A11: やと。蓮華受生の宗門には不思議にこれを許された
J09_0029A12: るぞ。忝なき。さりながら。もし願行相續の宗義に
J09_0029A13: 背き。隨犯隨懺の故實を忘れて。一向に他力の出離
J09_0029A14: には。貪瞋惡業も。苦しからずなど思ふ。意樂邪見
J09_0029A15: の輩は。故起の貪瞋をも恐れず。接續の妄念をも愼ま
J09_0029A16: ざるべければ。貪瞋きをひおこれども。おこるとだ
J09_0029A17: にもしらで。ひたと。それのみ思ひつづけ。又貪瞋
J09_0029B18: おこるとしる時も。本より慚愧の心なければ。やが
J09_0029B19: て助玉へと思かへす隨犯隨懺の心も有じければ。妄
J09_0029B20: 念が常に主人なりて。念佛はいつも客人となれる
J09_0029B21: なるべし。さらずは。一亭にふたりの主人ありと
J09_0029B22: やいはん。されば古德も。すべて罪をかへりみぬ者
J09_0029B23: は。身の惡き事をしらず。身の惡き事を忘れぬれば。
J09_0029B24: また助玉へと思ふ心もなし。助玉へと思ふ心を。すす
J09_0029B25: めん爲にも。ことに罪業を恐るべきなり。と云へり仰ぎ
J09_0029B26: 願くは。念佛の行人。たれたれもはやく。正見の意樂
J09_0029B27: に住して。心の及ばん限り。いたく貪瞋罪業を恐れ。
J09_0029B28: つねづね稱名の時には。助玉へと。心にも思ひ。口
J09_0029B29: にも云ひ習ふべし。心は習はしの物なれば。習ひつも
J09_0029B30: りて性となれば。自然にやすく願行は相續せらるべ
J09_0029B31: きぞかし。實に今度生死をはなれて。必ず淨土に往
J09_0029B32: 生せばやと。思切てん人は。いかにもして。世の習
J09_0029B33: 俗に移されず。ひたすら。兩祖三代の芳躅を尋ねて。
J09_0029B34: 安心も起行も進む方に赴くべし。ゆめゆめ邪解の同

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