ウィンドウを閉じる

Z0410 標註一言芳談抄 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0376A01: れば。あたら光陰をついやして。念佛申ひまもなき
Z08_0376A02: 也。古今に世をすて〻山にいる人山にても。なをう
Z08_0376A03: き時はいつちゆくらん兼好家集に。すめはまたうき
Z08_0376A04: 世なりけりよそなから。思ひしま〻の山里もかな。
Z08_0376A05: ○敬佛房云。後世者は。いつも旅に出たる思ひに住
Z08_0376A06: するなり。雲のはて。海のはてに行くとも。此身のあ
Z08_0376A07: らんかぎりは。かたのごとくの。衣食住所なくては。
Z08_0376A08: かなふべからざれども。執ずると。執せざると。こと
Z08_0376A09: のほかにかはりたるなり。つねに一夜のやどりにし
Z08_0376A10: て。始終のすみかにあらずと存ずるには。さはりなく
Z08_0376A11: 念佛の申さる〻也。
Z08_0376A12: ○旅に出たる。千載集に。定なきうき世の中としり
Z08_0376A13: ぬれは。いつくもたひの心ちこそすれ。○始終のす
Z08_0376A14: みかにあらず。〓十因云。實一生ナリ。豈
Z08_0376A15: センヤ永代乎。已上世中はとてもかくてもおなし
Z08_0376A16: こと。みやもわらやもはてしなけれは。
Z08_0376A17: ○明禪法印云。居所の心にかなはぬはよき事なり。心
Z08_0376A18: にかなひたらんには。われらがごとくの不覺人は。一
Z08_0376A19: 定執著しつとおぼえ候なり。
Z08_0376A20: ○一定 さだめて執著すべし。
Z08_0376B01: ○有云。高野の空阿彌陀佛の御庵室の。しつらひのび
Z08_0376B02: んぎあしげにて。すこしか樣にしたらばよかりなん
Z08_0376B03: と。御詞のありける間。さやうしつらひなさんと申け
Z08_0376B04: れば。いや〱あるべからず。是又厭離のたよりなり。
Z08_0376B05: よしと思ひて心とめて無益なりとぞ。おほせられけ
Z08_0376B06: る。
Z08_0376B07: ○高野の空阿彌陀佛。 明遍僧都の事也。
Z08_0376B08: ○有云。心戒上人。つねに蹲居し給ふ。或人其故を問
Z08_0376B09: ひければ。三界六道には。心やすく。しりさしすへてゐ
Z08_0376B10: るべき所なきゆへ也云云。
Z08_0376B11: 蹲居 つい居る事也。とくとしりをすへぬ也。
Z08_0376B12: ○敬佛房云。むかしの坂東の人。京にながゐしつれば。
Z08_0376B13: 臆病になるなりといへり。是後世者の才覺なり。身し
Z08_0376B14: づかに。心すむなどいふ事は。いさ〻かなれども。名
Z08_0376B15: 利をはなれてのうへの事也。然るを幽玄なる樓にう
Z08_0376B16: そぶきたるばかりをもて。心のすむと執するがゆへ
Z08_0376B17: に。獨住の人。おほくは。ひが事にしなすなり。
Z08_0376B18: ○臆病になるなり。關東の者は。大膽にて。命をか
Z08_0376B19: ろくもつ也。京はしづかなるところにて。常住のお
Z08_0376B20: もひになりて。命がおしくなる也。そのごとく。初心

ウィンドウを閉じる