ウィンドウを閉じる

Z0340 三部鈔諺註序 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0002A01: 當なること。執持名號の一法にしくはなし。是すなは
Z08_0002A02: ち。かの佛の本願の行なるがゆへなり。然るに。時澆
Z08_0002A03: 季に屬して。人正見すくなし。念佛にをいて邪義を
Z08_0002A04: まうけ。妄情にまかせて聖敎をみだり。無智の男女を
Z08_0002A05: たぶらかし。まどはすもの。(タウ)々として華夷に散在せ
Z08_0002A06: り。まことにこれ大悲佛願の(アタ)(カタキ)なり。寧また獅子身
Z08_0002A07: 中の蟲にあらずや。た▲すべからく黑谷の正流を
Z08_0002A08: くむべし。かりそめにも白俗の邪風になびくこと勿
Z08_0002A09: れ。そも〱京極淸淨花院向阿上人は。淨土鎭西一
Z08_0002A10: 流の名匠にして。すなはち禮阿和尙の上足たり。そ
Z08_0002A11: の德。智道をそなへて。その才。內外にわたり。文筆
Z08_0002A12: たくみにして。和歌の道に名あり。いはゆる兼綜衆藝
Z08_0002A13: の上人なり。元享のころほひ。まのあたり佛勅をうけ
Z08_0002A14: て。三部七册の鈔を述作し給へるに。因人重法のいは
Z08_0002A15: れなれば。渴仰の緇素展轉してきそひうつし。念佛の
Z08_0002A16: 家には。これをとりて祕要とせり。されども。時運
Z08_0002A17: いまだいたらずして。流芳とをからず。上人の滅後
Z08_0002A18: 七十餘年にをよびて。江州淨嚴院の隆堯法印。はなは
Z08_0002A19: だ此鈔を尊信して。瑞夢を得給へるに。たま〱鈔
Z08_0002A20: 主の忌日にあたりしかば。感歎にたえず。是を開板し
Z08_0002B01: て。ひろく世につたへたまひぬ。しかあるに。かの印
Z08_0002B02: 本。當世には見をよび侍らず。おもふに。應仁の兵燹
Z08_0002B03: にか〻りて。舊板は烏有となり。その本もまた散亡せ
Z08_0002B04: るなめり。近年重刊の本。幸にいでたれども。あるは
Z08_0002B05: 和語をかろしめて。なをざりにし。あるは難辭にさえ
Z08_0002B06: られてをろそかにす。惜かな。玄を知るに人なくして。
Z08_0002B07: 徒に卞璧の埋ること。爰に京師の愚公。乳水眼を具し
Z08_0002B08: て。ふかく此鈔を解し。老婆心をもて。はじめてこれを
Z08_0002B09: 講ぜられしに。四衆の聽者。席をあらそひて。をの〱
Z08_0002B10: 歎賞歡喜すること。たとへば久旱の初雨にあへるが
Z08_0002B11: ごとし。これより心をおこし。行をたつる人おほかり
Z08_0002B12: けり。まさに今。都鄙の貴賤。此抄をうやまふ事佛
Z08_0002B13: 經のごとし。念佛の行者たれば。これをよまざる
Z08_0002B14: を耻辱とし。これを信せざるを邪見とす。こ〻にをい
Z08_0002B15: て抄主の嘉名。ふた〻び海內にふるふ。これしかしな
Z08_0002B16: がら愚公發揮の力なり。予かの講莚にもれぬるは。す
Z08_0002B17: こぶる遺憾なれども。當寺相傳の古本を得て。此抄を
Z08_0002B18: 信ずる事年あり。かつて甘心してこれをよむに。經釋
Z08_0002B19: ()(イン)を發明し。未曾有の妙趣をしめす。義をたつる
Z08_0002B20: こと公にしてかつやすく。詞をのぶること雅にし

ウィンドウを閉じる