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J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0303A01: 師年二十宗規に凖じ。東武三縁山增上寺に掛籍し。
J18_0303A02: もはら自他の聖敎を學はるるに。博學多識。頴悟敏
J18_0303A03: 捷にして。精勤進修さらに比類なし。入ては螢雪の
J18_0303A04: 窓に寢食を廢して。繩錐苦學さらに怠らず。出ては論
J18_0303A05: 塲の會に席を重ねて。慧解秀逸の譽高く濟輩欽崇し
J18_0303A06: て歎伏せざるものなし。その頃華嚴の覺州。江戸に
J18_0303A07: て唯識論述記の講莚を開れしに。師もその聽衆にて
J18_0303A08: 有けるが講主の所解いささか意に適せざる事ありし
J18_0303A09: 故。或時殊更に行て謁を乞て。覺州を難して論義せ
J18_0303A10: らる。師覺州に屈せずしていへらく。我若百日閉關
J18_0303A11: せば。述記を講ぜんこと難からじ座主の講は聞に足ず
J18_0303A12: とてされり。其後覺州和泉の堺にて。重て述記を講
J18_0303A13: せられし時。此事を語出て他日師の學解さだめて增
J18_0303A14: 進せん後世怖べしと讃歎せられけるとぞ。
J18_0303A15: 師法﨟漸たけにしかは。宗戒兩脈の禀受も障碍なく
J18_0303A16: 成し後。ひたすら名利の榮進をいとひ。もはら潜修
J18_0303A17: 密證の志操深かりしゆゑ。やがて衆僧の交をさけ。
J18_0303B18: 學席を辭して。一包飄然として。京師に登り。洛西
J18_0303B19: 長時院の湛慧和上を拜し。菩薩の大戒を重受し。盡
J18_0303B20: 形壽の八齋戒を受得せらる。これより日夜法衣を脱
J18_0303B21: ことなく。誓て脇席に附す。解行精修已往に倍して
J18_0303B22: 日新の功をはげまれたり。
J18_0303B23: 師初には地薩菩薩を信敬して。常に深く二世の悉地
J18_0303B24: をいのられしが。世の富貴などいふものは。人によ
J18_0303B25: りて害ともなるなれば。あながちに願ふべきにもあ
J18_0303B26: らず。さらば此世のことは貧にしてよからんには貧
J18_0303B27: ならしめ。賤にしてよからんには賤ならしめ。とに
J18_0303B28: もかくにもただよからんやうにまもらせ給へとな
J18_0303B29: ん。祈念せられける。
J18_0303B30: 評云。今時の人。萬事宿業の所感なることを辨
J18_0303B31: ず。佛菩薩等に對して。非理の福壽を祈求するも
J18_0303B32: の多し。思はざるの甚しきなり。ただ萬般存此
J18_0303B33: 道。一味信前縁の漢ならば。何の福壽をしも祈
J18_0303B34: らんや。古人のいへることあり。學者惟恐己眼

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