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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0129A01: 沒後の次第など具に遺囑し。又別に遺訓五件を書し
J18_0129A02: て受化の道俗に示さる。かつ告ていはくわが病此度
J18_0129A03: 必死と思ひ定めぬ。仍て近き内臨終の道塲に入らん
J18_0129A04: と思ふなり。さもあらは。日ころ申せし如く。無用
J18_0129A05: の者を病床の邊へ近つくべからず。只隨侍の者一兩
J18_0129A06: 人。かはるかはる病牀に在りて。間斷なく念佛を勸む
J18_0129A07: べし。平生十萬の日課。今日まで一日も懈らず。今
J18_0129A08: 日よりは。念珠を取るとも。必しも數を認ずして。
J18_0129A09: 出入息に任せて隨分に念佛すべし。われ若怠る氣色
J18_0129A10: 見えなは。側にて靜かに唱へて聞すべし。固く數を
J18_0129A11: 記する事は。平生の間。懈怠の心をいましむる爲な
J18_0129A12: り。今病床に臨ては。萬事嬾き間。數にかかはらず
J18_0129A13: して。唯稱名退轉なく。相續するこそ詮要なれ。又
J18_0129A14: 今日よりは不臥をも止て。平床に伏すべし。われ年
J18_0129A15: 來不臥せし事は。全く數遍を策さんと欲してなり。
J18_0129A16: 脇を席に著て。心安く臥しぬれは。本より睡眠ふか
J18_0129A17: き生質にて。心いよいよ惛沈になり行。かつ橫寢に
J18_0129B18: ては。念珠を搯るに便りあしし。是等の故ありて不
J18_0129B19: 臥をなし侍るなり。今既に臨終に及ひて。支躰疲れ
J18_0129B20: ぬ。いかにも身を安く持て。口に稱名たえざるやう
J18_0129B21: にするを第一とおもふなり。われ正しく命終に臨ま
J18_0129B22: は。枕の邊に一兩人居て。息の絶え終るまて。引磬
J18_0129B23: を鳴して靜かに念佛し。加持土砂の淨水にて。時時
J18_0129B24: 唇をうるほすべし。既に息絶えおはりなは。次の間
J18_0129B25: にて靜かに鉦皷を打て同音に念佛し。暖氣ことこと
J18_0129B26: く去て後沐浴し。庵の邊に地を卜て土葬に成し。其
J18_0129B27: 上には松にても植置べし。かならず墳墓を嚴重にす
J18_0129B28: へからず。尤葬儀も密かに執り行ひ。隨身の者相寄
J18_0129B29: て念佛囘向して葬るべし。又沒後にわが爲に追福の
J18_0129B30: 志あらは。をのをの自身の住所に歸りて密かに念佛
J18_0129B31: して回向せらるべし。道俗あまた相寄て。二夜三日
J18_0129B32: 七日七夜などの別時念佛を修する事。ゆめゆめある
J18_0129B33: べからずと。この趣元祖大師の御遺誡に見へたり漢語灯錄に載らる若わりなき同行。
J18_0129B34: わが庵室にて強て追薦をいとなまんと欲せは。七日

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