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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0128A01: るなり。又江戸崎大念寺義譽觀徹上人も。曾て師の
J18_0128A02: 道風を重じ給ひ。景慕のあまり。名號大小二幅。并
J18_0128A03: に慈引堂といへる扁額を染筆し給はるべき由。望み
J18_0128A04: 遣はされけり。師ふかく辭し申されしかども。頻に
J18_0128A05: のぞみ給ひしゆへ。共にこれを書して進ぜられける
J18_0128A06: に。上人なのめならず悅ひ給ひけるとなん
J18_0128A07: 一師染筆授與の名號。しばしば奇瑞ありける故。諸
J18_0128A08: 人願ひて奉持する者。甚おほし。多分は京都に上
J18_0128A09: せ。叮寧に裱𫌏して奉持し侍る。其中御幸町姉小路
J18_0128A10: 片岡某といへる褙匠の許へ誂へ遣す者多し。これに
J18_0128A11: 依てかの褙匠。師の德望を聞て信敬し。遙かに師を
J18_0128A12: 拜して日課念佛を誓約し。報恩の爲とて。先祖より
J18_0128A13: 家に祕重せし。慧心僧都親筆の三尊來迎の靈像一鋪
J18_0128A14: を師の許。送りまいらせけり。然るに此瑞像師の禪
J18_0128A15: 室に入せ給ふ前夜。師不思議の夢を感ぜられ。尊像
J18_0128A16: の樣子夢の所見と聊も違はずとなん。ことさら感仰
J18_0128A17: ふかかりけり。其頃相馬性澄和尚の許より。僧都所
J18_0128B18: 製の來迎讃を送られけるに。師始てこれを披閲し
J18_0128B19: て。信敬あさからず。諸人にも念佛に嬾き折には。
J18_0128B20: 此讃を諷詠して助業とすべきよし示され侍る。然る
J18_0128B21: に其境節にあたりて。はからず僧都手澤の來迎の像
J18_0128B22: を得られし事。誠に感通の至りなりと。皆人隨喜し
J18_0128B23: けり
J18_0128B24: 臨末并に沒後の事
J18_0128B25: 一師曾て伊達郡北半田小島川俣なと所所に居を移さ
J18_0128B26: れしかども。自行化他の勤さらに怠りなかりき。抑
J18_0128B27: 師東域の化縁。やうやく盡きて。西土の本懷。まさ
J18_0128B28: に近づきけるにや。享保三年春の季つ方より。いさ
J18_0128B29: さかはづらはしくおはしけるが。遂に北半田の禪房
J18_0128B30: に止まりて。終焉の思ひあり。生涯いく程ならず。
J18_0128B31: 死期ちかきにありと悅ひ給ふを。聞人みなあはれに
J18_0128B32: たうとくぞ思ひ侍る。同秋の季より所勞日日に增氣
J18_0128B33: しけれは。門弟等をのをの誠を盡していたはり奉り
J18_0128B34: ける。同十二月廿五日。門人を集めて。臨末の方軌。

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