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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0122A01: 法友の許へも。ことさらには尋訪らはるる事なし。
J18_0122A02: まして請用の饗應など一切うけられ侍らず
J18_0122A03: 一師常に恭敬修を第一とせられき。されは白地に佛
J18_0122A04: 前に向はれ候にも。其風情まことに大賓などに對す
J18_0122A05: るがごとく。いと等閑ならずぞ見えける。西方要决
J18_0122A06: に但想尊容當如眞佛といへり。因に閑亭後世
J18_0122A07: 物語に記す。隆寬律師の門人の記する所なり。問本尊に向ひ奉る時は。
J18_0122A08: 外に生身の佛御坐とおもふべきか。又此繪像木像こ
J18_0122A09: そ。頓て生身の佛よと思ふべきか。答二の義共に違
J18_0122A10: はず。敬日上人のいはく。此形像を以て。生身の佛
J18_0122A11: を想像便として。此佛だにも。めでたくおはしま
J18_0122A12: す。まして生身の佛。いかに愛たくおはしますらん
J18_0122A13: と。戀しく思ひ奉れは。此形像に思ひ馴奉りて生身
J18_0122A14: の佛を見奉る也と云云明遍僧都のいはく。此本尊の
J18_0122A15: 外に。生身の佛おはしまさず。この繪像木像を。頓
J18_0122A16: て生身の佛と思ふこそ。本尊に向ひ奉る甲斐なれ。
J18_0122A17: 眞言敎にも。此本尊を軈て生身と思ひて行へばこ
J18_0122B18: そ。悉地もかならず疾成就すれと云云上人の宣は
J18_0122B19: く。生身の佛。この本尊に入給へは。本尊の御眼に
J18_0122B20: 見へ奉るは。頓て生身の御眼に見へ奉ると思ふべ
J18_0122B21: し。本尊の御耳に申す事聞れ奉るは。やがて生身の
J18_0122B22: 御耳に聞れ奉ると思ふべし。かやうに思へば。本尊
J18_0122B23: に向ひ奉る功德。目出たき事なりと已上隆寬
J18_0122B24: 一師の言貌さはめて溫柔謙下なりといへども。常に
J18_0122B25: 膝下に侍する者も肅み敬ふて。あへて媟慢する事な
J18_0122B26: し。その道骨の凛然たること知ぬべし。師晝夜常に
J18_0122B27: 危坐しておはしける。設ひ燕居の折にも。いまだか
J18_0122B28: つて胡床かきて大坐せれしを見ずと。又師晝夜共に
J18_0122B29: 直綴の上に腰帶を堅く縮て身を聳かしおはしける。
J18_0122B30: 或人その故を尋ねしかは。師申さるるやう。身持心
J18_0122B31: ずかひ常に旅に出立たる想ひすれば。心發輝として
J18_0122B32: 念佛も勇み進むゆへ。不斷にかく仕着侍るなりと。
J18_0122B33: 又問ふ。多年左樣におはしますやと。師答ていはく
J18_0122B34: この十箇年ばかり以來。かく心懸侍りきと。是を

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