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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0121A01: して積る所也
J18_0121A02: 一師享保二年九月。安達郡本宮にて瘧疾をいたはり
J18_0121A03: 申されしに。所勞ことに劇しかりつれども。十萬の日
J18_0121A04: 課一日も怠りなく。却つて尋常よりも增修せられけ
J18_0121A05: り。熱甚しき折には。水にて唇をうるほしなどして
J18_0121A06: 勤られき。勤行の時は。杖にて佛間へも參られ。一
J18_0121A07: 時も怠慢なく勤め申されき。謂つべし造次顚沛にも
J18_0121A08: かならずここにをいてすと
J18_0121A09: 一師平素。威儀質朴にして華異を好まず。よろつ人
J18_0121A10: の目立べき事これなし。誓つて勞を人に施さず。口
J18_0121A11: に淡薄を甘んじて滋味を嗜まず。繒纊の類ひ。かつ
J18_0121A12: て身にふるる事なく。資身の具。餘長を貯へす。施
J18_0121A13: 財の分。何によらず固く辭して受られず。但し遁世
J18_0121A14: 以前に學問料とて。少少貯へ置れし淨財を。人の許
J18_0121A15: 預き置き。その利息にて形のごとくに。衣食の資縁
J18_0121A16: なと計らひ申されき。これによつて萬質素にして。
J18_0121A17: 儉約を守られ侍る。又勸化招待の事ありて。遠方へ
J18_0121B18: 出られ候にも。其路費は。いつも自分の物受用せら
J18_0121B19: れき。又名號なと望申者には。日課一萬五千聲の契
J18_0121B20: 約にて授與せらる。渡世に抅はらさる老人。或は剃
J18_0121B21: 髮入道なとの暇ある身には。二萬三萬以上の日課に
J18_0121B22: て授られき。かくて名號受持の者。凡三千餘人な
J18_0121B23: り。これらの名號の料帋筆墨まて。悉く自分の阿堵
J18_0121B24: の物にて施與せられ侍る
J18_0121B25: 一師懇切の法友同行に參會の折にも。法話の外は急
J18_0121B26: 切の事にあらされは。一向に世間物語せられす。設
J18_0121B27: ひ快活の事なとある折にも。ただ莞爾として微笑せ
J18_0121B28: らるるのみ。いまだ曾て口を開て。訶訶大笑せられ
J18_0121B29: し事なし。楞嚴先德のいはく。然麁強惑業令人覺
J18_0121B30: 了。但無義語。其過不顯恒障正道善應治之。行
J18_0121B31: 者常於娑婆依正生火宅想絶無義語相續念佛。
J18_0121B32: 光明大師の宣はく。戯咲作罪多劫受。不惜佛意
J18_0121B33: 取人情と。師常にこれらの御語を深く依信せられ
J18_0121B34: き。師久しくとて。他方へ出られ候折にも。親しき

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