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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0119A01: りて云く唐の靑龍寺に釋光儀といひし人あり。みつ
J18_0119A02: から根を斷て非法の障難を遁れ。志を守りて利益お
J18_0119A03: ほかりし事。僧傳に稱する所なり。われ是を見て甘
J18_0119A04: 心して思はく。古今智愚ともに。人慾の嶮き道をふ
J18_0119A05: みて平生を誤る例おほく。又行化の方にも。世の譏
J18_0119A06: 嫌を受ること少からず。されは自行化他の爲。旁根を
J18_0119A07: 切て僧行を堅くせんと。こひ願ふこと年久し。然れと
J18_0119A08: も。是に依て。もし癈人ともなりなは。却て修行の
J18_0119A09: 妨ならんと。深く恐慮して延引せし所に。栂尾の明
J18_0119A10: 惠上人遺敎經の文に付て。佛法の爲には身命をもか
J18_0119A11: へりみるべきにあらずとて。則みづから右の耳を切
J18_0119A12: り給ひし事。彼傳記にしるされしを見て。たちまち
J18_0119A13: 勇猛決定の心起りて。遂に所存を果し侍りきとぞ申
J18_0119A14: されける。然るに其後さらに病惱なく。勇猛堅固に
J18_0119A15: 苦修練行しおはしける事諸人のことごとく知れる所な
J18_0119A16:
J18_0119A17: 私に云。唐朝の光儀根を斷て利益おほかりし事。宋
J18_0119B18: 高僧傳第廿六興福篇に見えたり。具に文に對して撿
J18_0119B19: ふべし今案ずるに。この前陰斷却の事。光儀律師無
J18_0119B20: 能和尚の如き志あらは可なるへし。普通の人のみだ
J18_0119B21: りに學ぶべき事にあらず。爲霖禪師のいへる如く。
J18_0119B22: 大凡初心入道の人。婬心の息ざる事をうれへて。根
J18_0119B23: を斷んと欲するは。その切に行道の爲に志を用るこ
J18_0119B24: と。誠に貴ぶべしといへども。欲心熾盛なる者。た
J18_0119B25: だその勢を斷ぬれば淫心息とのみ思はば。甚不可な
J18_0119B26: りと。猶又四十二章經法句譬喩經第一。義淨三藏の
J18_0119B27: 南海傳第四等に誡あり。能能斟酌すべき事なり
J18_0119B28: 一師專修一行の身となられける年。十二月廿九日の
J18_0119B29: 夜持戒者の事など思惟して。われ持戒にて念佛せん
J18_0119B30: か。將凡僧のままにて念佛せんかなと。彼是思ひわづ
J18_0119B31: らひてまとろまれけるに。其明方の夢に。誰とも思
J18_0119B32: ひわかざる高僧一人來りて示し給ひけるやう。只
J18_0119B33: 上人の一開永不閉の旨を守るべし暫開の定散をおも
J18_0119B34: ふべからずと。師この言を聞て夢さめ。感喜身にあ

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