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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0116A01: 不思議神通。不思議辯才といへり。南無阿左囉大
J18_0116A02: 聖。一持之後生生加護の御利益。賴母しく貴くぞ侍
J18_0116A03: る。寶永元年五月朔日。師廿二歳山崎の佛祖前に於
J18_0116A04: て。誓て慾事を斷じ。梵行を固くす同七月より。日
J18_0116A05: 課佛名一萬聲を誓ふ。同年八月州の磐瀨郡大栗村の
J18_0116A06: 阿彌陀堂にして。斷食する事七箇日。晝夜至心に念
J18_0116A07: 佛して。佛の覆護を仰ぎ。信芽の增長を祈請せら
J18_0116A08: る。同二年山崎良通上人の輪下にして。兩脈の秘璽
J18_0116A09: を禀け。興蓮社良崇と號せり。同五年十二月望日。
J18_0116A10: 常坐不臥日課三萬稱をちかふ。時に廿五歳なり。翌
J18_0116A11: 年五月廿六歳にして。遁世の宿志を遂られ侍る。墨
J18_0116A12: の袖いとど色そひて。誠の道も淺からずやといと賴
J18_0116A13: 母し。師曾て遁世の因縁を語りていはく。われ性と
J18_0116A14: して財欲ふかし。若世上にまじらひ。此身を立んと
J18_0116A15: 思はば。事にふれて。心中の悕望たゆることあるべか
J18_0116A16: らず。ひたすら俗念のみ深くて。心行は日夜に疎かに
J18_0116A17: なりもてゆかんは一定なり。しかじ非人法師の身
J18_0116B18: となりて。稱名の數遍を策まんにはと。かく年ごろ
J18_0116B19: 思ひめぐらして。永く此世を捨侍りつるなり。全く塵
J18_0116B20: 外に逍遙して。安逸を求んとにあらず。只身を輕く
J18_0116B21: して。世望を少くし。不急の事をさしをきて。數遍
J18_0116B22: の功を積んとこひねがふ計なり。更に別の意許なし
J18_0116B23: とぞ申されける。淸少納言が。浦山しき物。誠に世
J18_0116B24: を思ひ捨たるひじりといひけん。實にも世の中に又
J18_0116B25: なくうらやましき事のかぎりとぞ覺ゆ
J18_0116B26: 一師剃度の後。三四年の間は。心願おほくして萬の
J18_0116B27: 佛菩薩神天をも念し奉り。種種の行どもを雜修せら
J18_0116B28: れしかども。宗門の安心熟得の後は。一切の諸願諸
J18_0116B29: 行を廢して。西方の一行を唯願唯行し。正助二行の
J18_0116B30: 外。他事なしとぞ
J18_0116B31: 一師遁世の翌年仲秋朔旦。羽州最上三寶寺の佛前に
J18_0116B32: て聖〓を拈り。一向專稱の行者と成て後は。助業を
J18_0116B33: も兼ず。唯稱名正業をぞ修せられ侍る。其御〓の次第
J18_0116B34: 一六時禮讃阿彌陀經六念佛卷六萬遍。一六時禮讃三

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