浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J16_0399A01: | たまはるところの御消息を秘藏して。出離の指南に |
J16_0399A02: | なんそなへ侍ける。必しも數返をさだめず思ひ出た |
J16_0399A03: | るかとおぼしくては。常に西向て高聲にぞとなへけ |
J16_0399A04: | る。病惱の時。八月廿九日不註年に近隣なる僧蓮臺房。 |
J16_0399A05: | 來りとふらひけれは。此所勞は日比ねがふところ也 |
J16_0399A06: | 明後日來臨し給へ。申べき事侍りと申けり。その日 |
J16_0399A07: | 又まかれるに。明後日辰時に。極樂にむまるべしと |
J16_0399A08: | 申あひだ。いかにして。さはしりたまへるぞととへ |
J16_0399A09: | ば。その事なり。夢に墨染の衣着したる僧。靑白二 |
J16_0399A10: | 莖の蓮花をもちて來れりつるか。白蓮花をわれにさ |
J16_0399A11: | づけて。これは汝か分なり。この靑蓮花は。新田の |
J16_0399A12: | 太郞か分なりと。仰られつるに。白蓮花のうへに又 |
J16_0399A13: | 聲ありて。九月三日の辰時に往生すへしと。云と見 |
J16_0399A14: | てさめぬるなりといふ。事の樣たとく覺て。三日に |
J16_0399A15: | 又ゆきむかふに。病者のいはく。往生すでにちかづ |
J16_0399A16: | けり。よくきたりたまへり。四十九日の間は。ここ |
J16_0399A17: | に住して念佛したまふへし。御房はわが善知識な |
J16_0399B18: | り。年來秘藏のもの。附屬したてまつるへしとて。 |
J16_0399B19: | 上人よりたまはる所の御消息。ならびに和字にしる |
J16_0399B20: | せる。念佛の安心の書等これをわたす。其後あひと |
J16_0399B21: | もに。晨朝の禮讃を行ずるに。光舒救毘沙の句にい |
J16_0399B22: | たりて。禮讃をとどめて。念佛三遍唱へて。端座合 |
J16_0399B23: | 掌して。息たえにけり。四十九日の夜。蓮臺房ゆめ |
J16_0399B24: | にみる樣。かの禪門が。持佛堂かとおぼしき堂あ |
J16_0399B25: | り。前に池なんどありて。あるべかしく見ゆるに。 |
J16_0399B26: | 指入て拜すれば。金色の阿彌陀如來。壇の上に立給 |
J16_0399B27: | へり。堂の下には。念佛する聲ありけり。承仕など |
J16_0399B28: | 云ばかりなるもの指出て。此聲は閻浮提也。只今此 |
J16_0399B29: | 池の中に。蓮花生ずへし。これをみるべしと云。聲 |
J16_0399B30: | に應じて。白蓮花出生す。念佛の聲に隨て。蓮花忽 |
J16_0399B31: | に開て。此花の上に。亡者の禪門墨染の衣を着て座 |
J16_0399B32: | せり。時に微風この花を吹に。風に隨てなびきた |
J16_0399B33: | る。禪門蓮花よりおりて語ていはく。われ極樂の下 |
J16_0399B34: | 品下生に生ぜり。只今上品にすすむなりと云と見て。 |