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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0239A01: 云入たれども。借し付の節。御應對も無きに。唯今
J09_0239A02: に至り奧印の義。仰越され候ても。證印相ならざる
J09_0239A03: よし。返答に及びければ。御親類のことなれば。是非
J09_0239A04: 證印致さるべし。彌證印なきに於ては。公訴に及ぶ
J09_0239A05: 由。申來りし故。守敎家の主じ。兩人の子息をよび
J09_0239A06: て。右の次第を申聞け。而して予に慈父の遺言あり
J09_0239A07: しをば。兼ても申し聞けし通り。親類及び貧窮の者
J09_0239A08: には。なるたけ心を用ひて賑給をなすべし。されど
J09_0239A09: も借用證文の奧印に於ては。他人はもとより。親類
J09_0239A10: の賴みといへども。請人に立べからずと。懇に遺言
J09_0239A11: し給へり。然るに今債主の云に隨ひて。證印する時
J09_0239A12: は。慈父の遺命に背く。若遺命を守りて證印をなさ
J09_0239A13: ざれは。威勢ある債主。公訴に及といへば。いかが
J09_0239A14: 御裁許あるべきや。計り難し。進退すでに途にせま
J09_0239A15: れり。畢竟じて予が决擇の所は。遺命に背きては。
J09_0239A16: 家相續すとも。孝道に違へば本意に非。又遺命を守
J09_0239A17: るによりては。假令家斷絶に及ぶとも。祖先に對し
J09_0239B18: て。慚ることなしと思ふ。しかし人人の了簡は云何と
J09_0239B19: 云に。兩子も同意のことなれば。さらばとて。彌證印
J09_0239B20: の義は。長く御斷り申すと。返答に及しに。其後は
J09_0239B21: いかがせしにや。往復もせざりしが。程經て守敎家。
J09_0239B22: 支配の役所へ出し時。其方こと平生の行ひもよく。別
J09_0239B23: して先祖の遺命を愼み守ること神妙なる由。厚く賞詞
J09_0239B24: を蒙りしとなり。凡そ人の祖先となる者。終りに臨
J09_0239B25: んで。子孫に對し。たはれ言云ふべきや。反じて知
J09_0239B26: れ。子として親の遺言を。守らずして可ならんや。
J09_0239B27: さればこそ。一人は親の遺命を守るが故に。其家も
J09_0239B28: 繁榮して賞詞を蒙り。一人は親の遺命に背くが故に。
J09_0239B29: 其家頽廢して譴辭をうく。世間すら爾り。况や出世
J09_0239B30: 間法をや。實に我大師は。往生を志す人の爲には。
J09_0239B31: 大慈大悲の父なり母なり。既に决定墮獄の我人を救
J09_0239B32: はん爲に。多くの艱難辛苦を經。歸俗流刑にまで處
J09_0239B33: し給へども。是を痛み給はず。而して御臨末の砌に
J09_0239B34: 至り。殘し給はる御遺訓の一枚起請文なれば。若し

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