浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0239A01: | 云入たれども。借し付の節。御應對も無きに。唯今 |
J09_0239A02: | に至り奧印の義。仰越され候ても。證印相ならざる |
J09_0239A03: | よし。返答に及びければ。御親類のことなれば。是非 |
J09_0239A04: | 證印致さるべし。彌證印なきに於ては。公訴に及ぶ |
J09_0239A05: | 由。申來りし故。守敎家の主じ。兩人の子息をよび |
J09_0239A06: | て。右の次第を申聞け。而して予に慈父の遺言あり |
J09_0239A07: | しをば。兼ても申し聞けし通り。親類及び貧窮の者 |
J09_0239A08: | には。なるたけ心を用ひて賑給をなすべし。されど |
J09_0239A09: | も借用證文の奧印に於ては。他人はもとより。親類 |
J09_0239A10: | の賴みといへども。請人に立べからずと。懇に遺言 |
J09_0239A11: | し給へり。然るに今債主の云に隨ひて。證印する時 |
J09_0239A12: | は。慈父の遺命に背く。若遺命を守りて證印をなさ |
J09_0239A13: | ざれは。威勢ある債主。公訴に及といへば。いかが |
J09_0239A14: | 御裁許あるべきや。計り難し。進退すでに途にせま |
J09_0239A15: | れり。畢竟じて予が决擇の所は。遺命に背きては。 |
J09_0239A16: | 家相續すとも。孝道に違へば本意に非。又遺命を守 |
J09_0239A17: | るによりては。假令家斷絶に及ぶとも。祖先に對し |
J09_0239B18: | て。慚ることなしと思ふ。しかし人人の了簡は云何と |
J09_0239B19: | 云に。兩子も同意のことなれば。さらばとて。彌證印 |
J09_0239B20: | の義は。長く御斷り申すと。返答に及しに。其後は |
J09_0239B21: | いかがせしにや。往復もせざりしが。程經て守敎家。 |
J09_0239B22: | 支配の役所へ出し時。其方こと平生の行ひもよく。別 |
J09_0239B23: | して先祖の遺命を愼み守ること神妙なる由。厚く賞詞 |
J09_0239B24: | を蒙りしとなり。凡そ人の祖先となる者。終りに臨 |
J09_0239B25: | んで。子孫に對し。たはれ言云ふべきや。反じて知 |
J09_0239B26: | れ。子として親の遺言を。守らずして可ならんや。 |
J09_0239B27: | さればこそ。一人は親の遺命を守るが故に。其家も |
J09_0239B28: | 繁榮して賞詞を蒙り。一人は親の遺命に背くが故に。 |
J09_0239B29: | 其家頽廢して譴辭をうく。世間すら爾り。况や出世 |
J09_0239B30: | 間法をや。實に我大師は。往生を志す人の爲には。 |
J09_0239B31: | 大慈大悲の父なり母なり。既に决定墮獄の我人を救 |
J09_0239B32: | はん爲に。多くの艱難辛苦を經。歸俗流刑にまで處 |
J09_0239B33: | し給へども。是を痛み給はず。而して御臨末の砌に |
J09_0239B34: | 至り。殘し給はる御遺訓の一枚起請文なれば。若し |