浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0231A01: | は白樂天。吾朝には菅丞相なり。在纒出纒みな火宅な |
J09_0231A02: | り。眞諦俗諦しかしながら水驛なりとぞ。仰られけ |
J09_0231A03: | る。さて禪定殿下。土佐の國迄はあまりはるかなる程 |
J09_0231A04: | なり。わが知行の國なればとて。讃岐の國へぞ移し奉 |
J09_0231A05: | られける。御なごりやるかたなく思召れけるにや。 |
J09_0231A06: | 禪閤御消息を送られけるに。 |
J09_0231A07: | ふりすててゆくはわかれのはしなれと |
J09_0231A08: | ふみわたすへきことをしそおもふ |
J09_0231A09: | と侍りければ。上人御返事。 |
J09_0231A10: | 露の身はここかしこにてきえぬとも |
J09_0231A11: | こころはおなしはなのうてなそ |
J09_0231A12: | と。返りしめし給ひて。鳥羽の南の門より。川舟に |
J09_0231A13: | 召て。くだり給ふ。攝津の國經か島。播磨の國。高 |
J09_0231A14: | 砂の浦。おなじく室のとまり。讃岐の國。鹽飽入道 |
J09_0231A15: | 西忍が舘に至るまで。おほくの人人を結縁敎化し給 |
J09_0231A16: | ひ。つゐに同國子松の庄におちつき給ひぬと。あは |
J09_0231A17: | れ悲しき事ならずや。拾遺漢語燈ノ錄第十一之卷。今と全く同じ。是の如きの艱 |
J09_0231B18: | 厄苦難を忍受し玉ふ。勇猛精進なる御志を遂させ玉 |
J09_0231B19: | ふ。大師の御遺訓なれば。仰て信じ俯して信して。 |
J09_0231B20: | 一向稱名すべく社思ほゆれ。古人言る事有り。孔明 |
J09_0231B21: | が出師の表を讀で。涙を下さざる者は。是の人必ず |
J09_0231B22: | 不忠ならん。李密が陳情の表を讀で。涙を下さざる者 |
J09_0231B23: | は。是の人必ず不孝ならんと。是皆仁愛の心なく。 |
J09_0231B24: | つれなき人成るべし。今是御遺誓の貴き事を聞なが |
J09_0231B25: | らも。心に染ず。等閑にして但信稱名せぬ者は。究 |
J09_0231B26: | て無道心の人也。邪見の人なり。高慢の人也。是を |
J09_0231B27: | 枯稿の衆生と云ふ。たとひ墨染の袖長くとも。此御遺 |
J09_0231B28: | 誓を感ぜぬ人は。其心鬼なるべし此一段。湛澄上人の諺註を轉用す。嗚呼 |
J09_0231B29: | 悲ひ哉。痛ひ哉。大悲終極の一紙を外にして。東西 |
J09_0231B30: | に馳走し。南北に迷惑す。かく眞成に。出離の徑路 |
J09_0231B31: | を敎へ玉ふに。往ざるは是誰が過ぞや。必ず必ず後 |
J09_0231B32: | の悔ひ思はずは有べからず。 |
J09_0231B33: | 風にちる松の落葉を吉水の |
J09_0231B34: | なかれのすゑにかきあつめぬる |