観経疏光明抄
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんぎょうしょこうみょうしょう/観経疏光明抄
一八巻。長西撰。金沢文庫保管。善導『観経疏』に対する註釈書。玄義分七巻・序分義三巻・定善義四巻・散善義四巻の全一八巻で、このうち巻三および巻五の一部(玄義分)、巻八・一〇(序分義)、巻一五から一八(散善義)が現存する。本書は「惣じて定散諸善を以て弥陀の本願となし、別して念仏一行を以て本願の正意となす。念仏の中に於ては観念等を以て傍となし、称名等を以て正となす」(巻三)という諸行本願義の立場から『観経疏』を註釈したもので、長西の教学・思想を考察する上で重要な資料である。本書の成立は、長西が七八歳で『観経疏』の講義を行ったと伝える凝然『維摩経疏菴羅記』九の記載から、弘長元年(一二六一)頃と考えられてきたが、近年、建長年間(一二四九—一二五六)の良忠の講録である『観経疏聞書』に『光明抄』の影響を見ることができるとし、成立年時を早める説も提唱されている。
【所収】『宗学研究』(大谷派)九(一九三四)、一一(一九三五)、一三~一六(一九三六~三八)
【参考】西島泰英「金沢文庫所蔵の『観経疏光明抄』解説」(『宗学研究』九、一九三四)、岸章二「金沢文庫所蔵観経疏光明抄玄七第五(?)と同序三第一の本文及びその解説と光明抄研究の一問題」(『宗学研究』一一、一九三五)、廣川堯敏「金沢文庫本『観経疏聞書』と『光明抄』」(『浄土宗学研究』一八、一九九二)
【執筆者:吉田淳雄】