般若経
提供: 新纂浄土宗大辞典
はんにゃきょう/般若経
智慧の完成(般若波羅蜜)を説く経典群の総称。梵本・漢訳・蔵訳合わせて一〇系統以上、六〇種以上が現存する厖大な経典群であり、漢訳だけでも『正蔵』の般若部に四二部七七六巻が収められている。大乗仏教の先駆経典であり、空・発菩提心・六波羅蜜などを説き、智慧の完成へ導く菩薩の実践が示されている。梵本の『八千頌般若経』の原型が紀元前後に成立し、八〇〇年以上にわたって増広され漢訳された。『八千頌般若経』のもっとも古い漢訳である『道行般若経』をはじめ、『大般若経』六〇〇巻、『金剛般若経』『般若心経』『理趣経』などの漢訳がよく知られている。浄土宗の食作法では『般若心経』を読誦する。『七箇条制誡』の一箇条目に、「我は阿弥陀をこそ憑みたれ、念仏をこそ信じたれとて、諸仏菩薩の悲願を軽しめたてまつり、『法華』『般若』等のめでたき経どもを悪く思い謗る事はゆめゆめあるべからず」(聖典四・三三六/昭法全八一〇)と、念仏を信じても般若経等を謗ってはいけないと記されている。
【参考】E. Conze: The Prajñāpāramitā Literature, Mouton & Co., 1960.、梶芳光運『大乗仏教の成立史的研究』(山喜房仏書林、一九八〇)
【参照項目】➡般若心経
【執筆者:佐藤堅正】