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浄土二蔵綱維義

提供: 新纂浄土宗大辞典

じょうどにぞうこういぎ/浄土二蔵綱維義

一巻。『浄土二蔵二教略頌綱維義』あるいは『二蔵綱維義』ともいう。聖聡述。成立年代は不詳だが、『頌義』成立が至徳三年(一三八六)であるから、それ以降の成立であり、また聖冏を先師と呼ぶことから聖冏没後(一四二〇)以降の作と推定される。聖冏釈浄土二蔵義』に対する注釈書で二蔵二教判について大綱を述べたもの。本書は稟承之次第と諸文分別の二章からなる。初めの稟承之次第は、徹二蔵之本文(二蔵の本文を徹す)と正明稟承之次第(正く稟承の次第を明かす)に分類される。徹二蔵之本文では、いくつかの問答によって『頌義』の特徴を明かす。正明稟承之次第では浄土宗相承を明かし、そこに『頌義』を位置付けようという聖聡の試みが感じられる。第二の諸文分別は就三法輪分別之(三法輪に就いてこれを分別す)と就二教分別之(二教に就いてこれを分別す)に分類される。就三法輪分別之では、三輪立不門・三輪摂不門・帰本同異門の三つの観点から、浄土宗の教えと三法輪の関係について述べ、浄土教が帰本法輪にあたることを示す。就二教分別之では、二蔵立不門・二蔵摂不門・二教同異門・事理俱頓門の四つの観点から、二蔵二教の教判について言及している。本書は『頌義』の一字一句を解説する書ではなく、浄土宗相伝中の位置づけを試みた書といえよう。


【所収】浄全一二


【参考】金子寛哉「『浄土二蔵二教略頌綱維義』一巻」(『聖聡上人典籍研究』山喜房仏書林、一九八九)


【参照項目】➡釈浄土二蔵義


【執筆者:石田一裕】